樹皮マルチの雑草抑制効果を利用した畦畔法面への被覆植物導入技術

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要約

畦畔法面への被覆植物導入時の針葉樹皮マルチは、雑草発生を抑制して被覆植物の生育が良好となる。繊維状の針葉樹皮は斜面でも移動せず、被覆植物苗の生育を抑制しない。樹木落葉等の有機物資材もべたがけ資材で飛散を防ぐとマルチとして利用できる。

  • キーワード:被覆植物、雑草、マルチ、畦畔、有機物
  • 担当:近中四農研・地域基盤研究部・畦畔管理研究室
  • 連絡先:電話084-923-4100、電子メールotani@affrc.go.jp
  • 区分:近畿中国四国農業・生産環境(畦畔)、共通基盤・雑草
  • 分類:技術 ・参考

背景・ねらい

畦畔法面の雑草管理を省力化するために、被覆植物の導入による雑草の抑圧技術が検討されているが、被覆植物が地表面を被覆するまでの期間に雑草が繁茂し被覆植物の生育が抑えられことが問題点として残されている。
そこで、農林業等で産出される各種有機物をマルチとして有効利用して雑草の発生を抑え、被覆植物植生への転換を省力的に行う方法を検討する。

成果の内容・特徴

  • 法面(傾斜30°)に植栽した被覆植物(ヒメイワダレソウ、宿根バーベナ、センチピードグラス)の被度は、無マルチに比べて各種有機物をマルチとして敷いたほうが高く推移し、雑草の発生量も少ない(図1、2)。
  • 有機物のなかでは、被覆植物の被度を高く、雑草の被度を低く維持するマルチとして、ヒノキ樹皮(繊維状に破砕したもの)、も み殻の効果が高いが、もみ殻は斜面では下方に流亡することから、斜面でも移動しないヒノキ樹皮が最適である。チップ材、イナワラは被覆植物の苗を覆い、生 育が遅延することがある。
  • 有機物マルチは、土壌水分の保持効果(マルチ区含水率11.3~12.0%、無マルチ区8.2%)、日射の遮蔽効果(マルチ区相対照度5~6%)がある。
  • 現地農家の畦畔法面(高さ1.5m、長さ28m)においても、ヒノキ樹皮(敷設厚3~5cm)を敷いて、苗を植栽した被覆植物3草種の生育は、防草シート(ポリプロピレン製)を用いたマルチに比べても良好であり(図3)、移植後約2ヶ月で畦畔全面をほぼ被覆し、雑草の発生もわずかである(データ省略)。
  • 飛散しやすいクヌギ、アカマツの落葉もべたがけ資材(透光性ポリプロピレン製不織布)で覆ってマルチに用いると、法面での被覆植物(ヒメイワダレソウ、宿根バーベナ、センチピードグラス)の植栽時の雑草防止マルチとして有効である(図4)。

成果の活用面・留意点

  • マルチを敷く前に、既存雑草を除草剤で枯死させる必要がある。
  • 移植直後は、被覆植物の苗が有機物によって覆われないように注意する。

具体的データ

図1 被覆植物の被度の推移

 

図2 雑草の被度の推移

 

図3 被覆植物の被度の推移(現地実証試験)

 

 

その他

  • 研究課題名:畦畔における被覆植物と雑草との競合関係の解明
  • 課題ID:06-08-06-*-02-03
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2001~2005年度
  • 研究担当者:大谷一郎、渡辺修