1~2日間隔の暗期中断によるホウレンソウの生育促進
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要約
晩秋から早春にかけてのホウレンソウ栽培で、生育株に対し暗期中断処理を行うと生育促進に有効であるが、暗期中断を毎日行うと早期抽だいによる商品性低下が問題となるので、1~2日間隔での処理が適切である。
- キーワード:暗期中断、1~2日間隔、生育促進、早期抽だい抑制、ホウレンソウ
- 担当:近中四農研・野菜部・施設栽培研究室
- 連絡先:電話0773-42-9906、電子メールham@affrc.go.jp
- 区分:近畿中国四国農業・野菜、野菜茶業・野菜栽培生理
- 分類:技術・参考
背景・ねらい
中山間地から近接した消費地への野菜の周年供給のため、簡易な日長制御装置による生育促進技術を開発する。ホウレンソウに
は暗期中断のような長日処理によって生育が早まる性質があり、以前からこれを晩秋から早春にかけての生育促進技術として利用する試みがあったが、本作物が
長日植物であるため、商品性を下げる早期抽だいが起こる危険性が常につきまとう状況にあった。そこで、同処理を1~2日間隔で行うことで抽だいの発生を抑
えつつ、生育促進を実現することを試みる。
成果の内容・特徴
- 本葉が見え始めた頃から、1~2日間隔で週3回、深夜2時間程度、約1μmol m-2 s-1(波長400~700
nm)の光強度で作物を照射して暗期中断処理を行う。市販のウイークリータイマーで光源のON、OFFを制御し、例えば毎週月、水、金曜日の23:00か
ら翌日の01:00までという設定で光照射する。
- 週当たりの照射時間を等しくした場合、暗期中断を1~2日間隔で行った方が、毎日行うよりも早期抽だいを起こしにくい(図1)。
- 1~2日間隔の暗期中断処理でホウレンソウの草丈伸長は促進され、収穫が最大十数日早まる(図2)。
- 同処理によって、草丈伸長のほか、重量増加、葉の展開も早まる。ただし、草丈が同程度の収穫物で比較すると、無処理と比べて重量、葉数とも小さい数値になる。茎長は無処理より若干長いが、商品性に影響するほどではない。また、葉色は同処理によってやや薄くなる(表1)。
- 処理の光源については、白熱灯のほか、赤色のLEDでも効果を確認している(表2)。
成果の活用面・留意点
- 連続栽培を行う施設等における10月中旬~2月初旬まきの作型で有望である。
- 品種適応性については今後検討予定であるが、現段階では晩抽性が「オーライ」と同等かそれ以上の品種を使用することが望ましい。
- 作物の相互遮蔽等を考慮すると、処理する光強度は作物付近で1μmol m-2 s-1(白熱灯であれば約50 lx)よりも強い方がより望ましい。
具体的データ
その他
- 研究課題名:発光ダイオード等を利用した日長制御生産システムの開発
- 課題ID:06-06-02-01-04-03
- 予算区分:交付金、所特定(2002年度)
- 研究期間:2001~2003年度
- 研究担当者:浜本浩、池田敬、嶋津光鑑
- 発表論文等:浜本ら (2003) 園学研 2(3): 307-310.