ハクサイの減・無農薬化に有効な防虫ネットトンネル利用技術
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要約
露地ハクサイを防虫ネットのトンネル被覆で減・無農薬栽培する場合には、作付け前の太陽熱処理、0.6mm程度の細かな目合いのネット、ネットの裾埋めおよびトンネル区画の細分化を組み合わせると有効である。
- キーワード:ハクサイ、減農薬、無農薬、物理的防除、防虫ネット
- 担当:近中四農研・野菜部・野菜栽培研究室
- 連絡先:電話0773-42-0109、電子メールkumakura@affrc.go.jp
- 区分:近畿中国四国農業・野菜、共通基盤・総合研究
- 分類:技術・参考
背景・ねらい
野菜生産では種々の手法を組み合わせて減農薬化が進められている。とくに市場外流通が主体となるような小規模な産地にとっては、より減農薬化、無農薬化を
進めて消費者に安全性をアピールすることが必要となっている。初冬どり露地ハクサイはこのような産地での重要品目のひとつであるが、虫害が多く大幅な農薬
低減が困難であるので、物理的防除法を導入した虫害回避方策が求められている。その方策として0.6mm目合い防虫ネットをトンネル被覆して用いる技術を
明らかにする。
成果の内容・特徴
- 初冬どりハクサイは無農薬では顕著な虫害を受け、収量は400kg/aを下回る。0.6mm目合いネットを用いてトンネル被
覆することで害虫侵入はほぼ防止され、収量600kg/a(慣行栽培の約90%)が得られる場合がある。ただし、侵入防止効果は完全ではなく、害虫が
0.6mm目合いネットをくぐり抜けてトンネル内部に侵入する場合もある。ハクサイではアブラムシ、ヨトウ類の侵入が問題となる。これらの害虫が侵入した
場合、侵入個体数が少数でも、トンネル内部では天敵が不在であるため著しい被害を与える(表1、図1)。
- ハクサイの作付け前に土壌を古ビニルなどで覆う太陽熱処理を3週間程度行うと、雑草量を減らすとともに、アブラムシ等の虫害を軽減する効果がある(表1、図1)。
- ネットトンネルを用いて無農薬栽培する場合は、トンネル当たりの株数を少数(40株程度以内)とするようトンネル区画を細分し、各トンネルの裾を確実に土に埋めると単位面積当たりの可販球収量が維持されやすい(図2)。
- ネットトンネルに農薬散布を併用する減農薬栽培の場合は、トンネル裾をクリップ留めしておいて農薬散布時のみネットを開ける
方法が作業上便利であるが、裾クリップ留めでは、害虫の侵入は裾埋めより増加する。裾クリップ留めでは、概ね3回以上の農薬施用を行うと、慣行の
80-100%程度の収量が得られる(図2)。
成果の活用面・留意点
- トンネルに侵入したアブラムシ類がウイルスを保毒しているとモザイク病が媒介され、顕著な被害を生じることがあるので、その回避に有利な品種・作型を選定する。
- 減農薬栽培では、トンネル内へのヨトウ類、アブラムシの侵入状況をこまめにチェックし、被害が拡散する前に害虫種に適した薬剤を施用する。適期に防除を実施すると最小の農薬使用回数で大きな効果を得ることができる。
- 中山間盆地(京都府綾部市)での試験結果である。
具体的データ
その他
- 研究課題名:防虫ネット及び天敵等による害虫防除技術の開発-野菜栽培
- 課題ID:06-06-01-*-05-03
- 予算区分:21世紀プロ7系、高品位野菜
- 研究期間:2001~2003年度
- 研究担当者:熊倉裕史、長坂幸吉、藤原隆広、吉田祐子
- 発表論文等:
1)熊倉ら(2003) 農業および園芸 78(7):786-794.
2)熊倉ら(2003) 近中四農研セ研報 2:27-39.