コマツナの成分品質を向上させる高温期の栽培管理条件
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要約
夏場の少量培地耕によるコマツナ栽培では収穫約4日前の遮光条件の除去または肥料切り管理によって、収穫時のアスコルビン酸含量が増加し、硝酸塩含量が減少する。この品質向上効果は、培地の種類によって変動する。
- キーワード:コマツナ、少量培地耕、栽培管理、硝酸、アスコルビン酸
- 担当:近中四農研センター・野菜部・野菜栽培研究室
- 連絡先:電話0773-42-0109、電子メールtfuji@affrc.go.jp
- 区分:近畿中国四国農業・野菜、野菜茶業・野菜栽培生理
- 分類:技術・参考
背景・ねらい
野菜の品質に関して、消費者の関心が高まっている。コマツナについては、有用成分として抗酸化活性物質の一つである還元型アスコルビン酸(以下、AsAと
表記する)が知られている。また、好ましくない成分として硝酸塩が認知されており、野菜中の硝酸塩濃度を軽減することが野菜に対する消費者の安心への配慮
として重要となっている。葉菜類については高品質なものを安定的に生産する方法として少量培地耕(根域制限栽培方法)を利用した高品質葉菜類生産技術の開
発が有効と考えている。そこで、根域制限栽培を前提としたコマツナ栽培における培地特性、収穫前の光環境、施肥管理が上記の2つの成分含量に及ぼす影響に
ついて明らかにする。
成果の内容・特徴
- 生育が十分確保できる程度の低濃度液肥(園試処方標準培養液1/4濃度液)を用いて灌水同時施肥を行う少量培地耕(本研究データはプランタ栽培による少量培地耕)では、施肥管理、光条件、培地の種類が収穫時のコマツナの成分品質に影響する(図1、図2)。
- AsA含量は、収穫4日前に液肥を水に変更すること(肥料切り管理)や栽培中の遮光条件の除去により約15~35%増加する(図1)。
- 硝酸塩含量は、肥料切り管理や光環境の改善により約20~90%減少する(図2)。
- 成分含量の変動幅はAsAでは、葉柄よりも葉身で大きく、硝酸塩では葉身よりも葉柄で大きい。可食部の成分含量は変動幅の大きい部位による影響を受け易い(図1、図2)。
- AsA含量の増加効果は、肥料切り管理よりも遮光条件の除去による効果が大きく、硝酸塩含量の減少効果は遮光条件の除去よりも肥料切り管理で高い(図1、図2)。
- 培地の種類によって肥料切り管理や遮光条件の除去による品質向上効果の程度が変動する(図3)。
- 収穫4日前に、肥料切り管理を開始すると、その後の草丈や生体重の増加が抑制される。一方、葉色への影響は小さい(表1)。
成果の活用面・留意点
- 肥料切り管理は後のコマツナの生育を抑制することから、処理の開始時期については、十分な生育が確保されてから(草丈が23~24cm程度を目安に)行うことが望ましい。
- 高濃度液肥(たとえば園試処方培養液2倍濃度液)を用いた液肥灌水により培地に過剰な肥料分が蓄積した状態では、収穫前に液肥を水に変更しても、硝酸塩含量の減少は少なく、AsA含量は増加しない。
具体的データ
その他
- 研究課題名:高機能性野菜生産のための栽培技術の開発
- 課題ID:06-06-01-01-01-03
- 予算区分:交付金
- 研究期間:2000~2004年度
- 研究担当者:藤原隆広、熊倉裕史、吉田祐子