ダイズモザイクウイルス-A2系統に対する抵抗性の品種間差異と遺伝様式
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要約
「サチユタカ」においてダイズモザイクウイルス(SMV)-A2及びD系統の発生がみられる。SMV-A2系統には「フクユタカ」、「アキシロメ」、「オ
オツル」等も感染する。ダイズのSMV-A2系統に対する抵抗性は単一の不完全優性遺伝子に支配される。
- キーワード:ダイズ、「サチユタカ」、SMV-A2系統、抵抗性、品種間差異、遺伝様式
- 担当:近中四農研・作物開発部・大豆育種研究室
- 連絡先:電話0877-63-8132、電子メールmsaru@affrc.go.jp
- 区分:近畿中国四国農業・作物生産(夏作)、作物・夏畑作物
- 分類:科学・参考
背景・ねらい
近畿中国四国地域で基幹品種として期待される「サチユタカ」において、ダイズモザイクウイルス(SMV)による褐斑粒被害が普及上の問題となっており、今
後、それに対する抵抗性品種の育成が急務とされている。そこで、「サチユタカ」に発生しているSMV系統を判別し、それに対するダイズ品種の抵抗性の品種
間差異及び遺伝様式を明らかにする。
成果の内容・特徴
- 中国四国地域で発病のみられた「サチユタカ」より分離したSMVは、系統判別用品種を用いた接種検定による分類では、鳥取、香川の分離株はA2系統に、岡山、広島の分離株はD系統に属する(表1)。
- SMV-A2系統に対するダイズ品種の抵抗性は、SMV-A,B,C,D各系統に抵抗性を持たない「ヒュウガ」や「新丹波
黒」等はすべて罹病性、SMV-A,B系統に抵抗性の品種のうち、「エンレイ」、「タマホマレ」等は抵抗性、「アキシロメ」、「フクユタカ」等は罹病性、
SMV-A,B,C,D各系統に抵抗性の「スズユタカ」、「すずこがね」等はすべて抵抗性である(表2)。
- SMV-A2抵抗性品種「タマホマレ」と罹病性品種「サチユタカ」の組合せ後代では、F1はネクロシス症状を呈し、F2はモザイク、ネクロシス、無病徴の3つの表現型に分離する。ネクロシス症状は個体毎に発現時期、程度に大きな差がある。
- SMV-A2抵抗性は、F2の表現型が無病徴:ネクロシス:モザイク=1:2:1に分離することから、単一の不完全優性遺伝子に支配されると推定される(表3)。
成果の活用面・留意点
- SMV抵抗性品種育成の参考資料とする。
- 「サチユタカ」に褐斑粒被害を引き起こしているウイルスとしては、その他のSMV系統やラッカセイわい化ウイルス等の可能性もあり発生系統には注意が必要である。
- 近畿中国四国地域で奨励品種に採用されている「フクユタカ」、「アキシロメ」、「オオツル」、「サチユタカ」等はSMV-A2及びD系統に対して罹病性であるため、これらを交配母本として用いる場合には注意が必要である。
具体的データ
その他
- 研究課題名:ダイズモザイクウイルス抵抗性の遺伝解析及び抵抗性系統の開発
- 課題ID:06-03-05-*-04-03
- 予算区分:交付金
- 研究期間:2002~2003年度
- 研究担当者:猿田正恭、笹谷孝英、菊池彰夫、岡部昭典