早生温州への夏肥窒素増肥は着果樹の根中窒素配分と貯蔵デンプンを増す

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要約

ウンシュウミカン「興津早生」の幼木において夏肥窒素の多施用は、冬季における地下部窒素を増し、着果樹の方が窒素増量の効果が高く、翌春の花や新梢への 寄与も高い。また、根のデンプン含量は着果負担により低下するが、夏肥窒素多施用により高く維持される。

  • キーワード:興津早生、着果負担、夏肥窒素、15N、13C、デンプン
  • 担当:近中四農研・特産作物部・果樹研究室
  • 連絡先:電話 0877-62-0800、電子メール f08411@affrc.go.jp
  • 区分:近畿中国四国農業・果樹
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

ウンシュウミカンでは隔年結実への対応として、近年園地別や樹別の隔年交互結実栽培が提唱され、施肥法も検討されている。 しかし、樹勢の弱い早生温州やその他のカンキツ類についての知見は少ない。そこで、ポット栽培の「興津早生」を材料に15N肥料を使い、結実の有無及び夏 肥施用量のみの差違が樹体内の窒素分配に及ぼす影響や、収穫1ヶ月前に同化した光合成産物の動態を検討し、夏肥窒素の役割を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 総生育量(乾物重)は着果樹(葉果比:19)の方が多いが、果実を除くと無着果樹が多く、とくに地下部の生育割合が高い。地下部への夏肥窒素吸収量の分配は着果の有無に関わらず多Nが高い。なお、秋の葉中窒素含量は多Nが3.3%、少Nが2.6%であった。
  • 各器官における夏肥窒素の寄与率(器官別窒素のうち夏肥由来窒素が占める割合)は葉より枝が、細根より中・小根が高い。また、多Nが高く、とくに小・細根でその差が大きい(図1)。寄与率は春には低下するが、1年枝での低下が最も大きい。
  • 無着果樹における翌春の着花量ならびに着果樹における翌春の新葉の発生は多Nの方が多い(表1)。また、花や新梢に使われる夏肥窒素は吸収された夏肥窒素の約15%と多く、この部位における夏肥窒素寄与率は多Nが少Nの1.5倍高い。
  • 収穫1ヶ月前に取り込まれた光合成産物(13Catomex%:試料中の13Catom%から自然界に存在するatom%を 引いたもの)は着果している場合は果皮や果肉で高く、無着果の場合は根部で高いが、果皮、果肉では少Nの方が高く、無着果樹では多Nの方が地上部や小・細 根で高い(図2)。
  • 冬季(12月)のデンプン含量は施肥の多少、着果の有無によらず小・細根で高く、着果すると1年枝や小・細根で低下するが、多Nの方が高く維持される(図3)。この傾向は春(5月)でも同じである。
  • 以上から、隔年交互結実を行っている早生温州においては、夏季の窒素レベルを高く維持することが1年枝や小・細根での貯蔵窒素やデンプンの確保を通して、生産量の増強及び樹勢維持に極めて重要であると考える。

成果の活用面・留意点

  • 本成果はポット栽培の3年生樹の当年の着果の有無によるものである。
  • 葉分析において窒素3%が標準とされており、多Nの3.3%は高窒素レベルである。
  • 隔年交互結実樹及び園における施肥管理の参考になる。

具体的データ

図1 12月の夏肥窒素寄与率

 

図2 12月の13Catomex%

 

図3 12月のデンプン含量

 

表1 着花、着葉に及ぼす影響

 

その他

  • 研究課題名:隔年交互結実栽培における有機・無機栄養動態の解明
  • 課題ID:06-04-01-*-04-03
  • 予算区分:超省力園芸
  • 研究期間:2001~2004年度
  • 研究担当者:内田誠、滝下文孝、草塲新之助