空中撮影熱画像と地形因子解析法を併用する高精度気温分布図作成法

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要約

多点で測定した気温に、航空機から撮影した熱画像の地表面温度と地表被覆の種類、局地的な地形等を説明変数とする地形因子解析法を適用して、従来困難であった局所的変化の大きい最低気温でも詳細かつ高精度な気温分布図を作成する方法を開発した。

  • キーワード:空中撮影、熱画像、気温分布図、地形因子解析法、最低気温、地表被覆
  • 担当:近中四農研・地域基盤研究部・気象資源研究室
  • 連絡先:電話084-923-4100、電子メールohara@affrc.go.jp
  • 区分:近畿中国四国農業・生産環境(土壌・土木・気象)、共通基盤・農業気象
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

現在最も気温分布図の作成精度の高い50mメッシュの地形因子解析法でも、局地気候が発達する複雑地形下の最低気温分布図を作成するには大きな困難を伴う。この最も困難な状況下でも、詳細かつ高精度に気温分布図を作成する方法を開発することを目的とする。

成果の内容・特徴

    最低気温の分布図は、多点で測定した気温と地表面温度との関係を図1に示す手順で解析することで作成する。地表面温度は、地表面分解能4mの熱画像から「航空機から撮影した熱画像のモザイク作成(平成13年度近中四主要成果)」に従って作成する。以下に、手順の概要と作成結果を示す。
  • 夜明け前に航空機から地表面分解能4m、温度分解能0.1℃の熱画像を撮影し、モザイク化する。同時に、多点で気温観測を行う。気温観測値の変動は地表面温度に較べて大きいので、観測回数をできるだけ多くして、平均化する。
  • 地表面温度と気温の関係は、地表被覆の影響を大きく受ける。そこで、IKONOS画像等を用いて地表被覆の分類を行う。分類は、気温観測点が多くはないので、樹高の高い森林、草丈の低い農耕地、裸地等を含む人工被覆と水域部等の少数にとどめる。
  • 目的変数を平均化した気温とし、地表面温度、地表被覆の種類、標高等を様々なスケールで平均化して説明変数とする重回帰式を変数選択法で決定する。作成した重回帰式を用いて4mメッシュの気温を推定し、気温分布図を作成する。
  • 2001年4月16日に淡路島で、1km2弱に1カ所の密度の90地点で2~4回地表面温度と気温を同時に観測した。気温変 動の標準偏差は0.41℃と地表面温度変動の約3倍で、地点間差も大きかった。説明変数を8個として得られた重回帰式の重相関係数は0.92、標準偏差は 0.73℃であった。50mメッシュの地形因子解析法では各々0.67と1.35℃で、新法が大きく優った。両法で作成した分布図を図2、図3に示す。

成果の活用面・留意点

  • 本法は、最高気温分布図の作成や都市気候の評価等にも活用可能と考えられる。
  • 地表面解像度が高いため、乱流等による気温と地表面温度の非平衡が大きな問題となるので、測定回数を増やして平衡状態に近い観測値を得ることが重要である。
  • 水域部では、気温未観測のため周辺温度で補間した。

具体的データ

図1 空撮熱画像と地形因子解析法を併用する気温分布図作成の手順

 

図2 地形因子解析法を適用して作成した淡路島中央域の50mメッシュ気温分布図

 

図3 気温観測値を熱画像と地形因子等に重回帰分析して作成した気温分布図

 

その他

  • 研究課題名:リモートセンシング技術と地形因子解析法を融合する気温分布測定法の開発
  • 課題ID:06-08-05-01-03-02
  • 予算区分:気温分布測定法(パイオニア)
  • 研究期間:2001~2003年度
  • 研究担当者:大原源二
  • 発表論文等:1)大原 (2003)中国・四国の農業気象16:46-47.