中山間地における圃場整備後の経過年数による畦畔植生の変化の特徴

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要約

中国地方の中山間地の水田畦畔では、圃場整備後にはスギナとヨモギの優占度が高く、整備後の年数経過にともない、チガヤ、シバのイネ科多年草の優占度が高い植生に変化する。地域全体で優占度の高いチガヤは、土壌水分の少ない環境で優占しやすい。

  • キーワード:中国地方、畦畔植生、イネ科多年草、土壌水分、優占度
  • 担当:近中四農研・地域基盤研究部・畦畔管理研究室
  • 連絡先:電話084-923-4100、電子メールwtnabe@affrc.go.jp
  • 区分:近畿中国四国農業・生産環境(畦畔)、共通基盤・雑草
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

畦畔植生には水田の漏水防止や作業用通路の確保、土壌浸食防止機能とともに、草丈が低く、刈り払い管理が容易な草種が望まれるが、圃場整備後の年数、立地 環境と管理形態と植生タイプに関する知見は極めて不足している。中山間地域において、土壌流出防止等の環境保全と在来植生保全、管理作業の容易さの観点か ら優れるシバ及びチガヤ等の植生成立条件を、整備年代の異なる畦畔の植生調査によって解明する。

成果の内容・特徴

  • 植生調査は圃場整備年代や造成規模の異なる畦畔を対象に6-10月の間に1x10mの横長コドラートを法面と天端に設置し、島根県大田市から広島県福山市にかけて中国地方を横断して行ったものである(図1)。出現種すべての被度と草丈から積算優占度(SDR2)を算出した。
  • 優占草種の出現に地域間差は見られず、チガヤ、シバ、ススキ、スギナ、ヨモギの優占畦畔が多かった。整備後5年未満ではスギ ナとヨモギが高い優占度を示し、整備後の年数経過にともない、チガヤ、ススキ、シバのイネ科多年草の優占度が上昇し、ヨモギの優占度は徐々に低下する(表1、表2)。圃場整備後20年以上経過した畦畔は、一年草比率が低下し、多年草比率が高くなる(図2)。
  • 広葉野草類は優占順位が上位になることは希で、キク科のコウゾリナとノアザミの優占度がやや高く、ノアザミは整備後の年数が経過するにつれて優占度が高くなる(表1、表2)。
  • 帰化雑草は圃場整備直後からオオアレチノギクの優占度が高く、ヒメジョオンとメリケンカルカヤは整備後20年以上経過した畦畔でも高い優占度を示し、風散布種子による周辺からの侵入で、植生遷移の過程で消滅しにくいと考えられる(表1)。帰化率は整備後の年数に関わらず、20%前後を占める(図2)。
  • 対象地域の中で最も優占度の高いイネ科多年草のチガヤは、積算優占度と土壌水分含量との間に負の高い相関があり、シバは土壌硬度と正の相関があることから、チガヤ、シバともに土壌水分の少ない環境で優占する傾向がある(表2)。

成果の活用面・留意点

  • 調査対象畦畔は、年間3-4回の刈り払いを行っている比較的管理のよい場所を選択した。冬季の植生データは含まれていない。
  • 圃場整備後の水田畦畔の植生管理を行う上での基礎的データとして活用できる。

具体的データ

  図1.畦畔植生調査実施地点

 

表1.整備年代ごとの主要草種の積算優占度

 

図2.整備年代ごとの雑草区分比率

 

表2 主要草種の積算優占度と畦畔環境要素との相関関係

 

その他

  • 研究課題名:畦畔の類型化と遷移系列を活かした植生導入技術の開発
  • 課題ID:06-08-06-01-03-03
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2002~2005年度
  • 研究担当者:渡辺 修、大谷一郎