黒毛和種雌牛の子宮内膜におけるG-CSFおよびMRJ遺伝子発現動態
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要約
黒毛和種雌牛の子宮内膜におけるgranulocyte colony stimulating
factor(G-CSF)とmammalian relative of DnaJ
(MRJ)遺伝子発現は妊娠日齢で異なる。妊娠牛の子宮内膜におけるG-CSFおよびMRJ遺伝子発現は、妊娠初期で高い傾向がある。
- キーワード:ウシ、家畜繁殖、子宮内膜、遺伝子発現、G-CSF、MRJ
- 担当:近中四農研・畜産草地部・育種繁殖研究室
- 連絡先:電話0854-82-1285、電子メールtenpoint@naro.affrc.go.jp
- 区分:近畿中国四国農業・畜産草地、畜産草地
- 分類:科学・参考
背景・ねらい
顆粒球コロニー刺激因子(granulocyte colony stimulating
factor:G-CSF)は造血系のサイトカインの一つで、ヒトの母体胎盤と胎児胎盤とで、タンパク質とレセプターが存在することから、胎児の成長や胎
盤形成に関与すると考えられている。mammalian relative of DnaJ
(MRJ)は分子シャペロンの一つで、マウスの胎盤形成の一過程であるchorioallantoic
fusionに必須の物質である。ウシの妊娠過程におけるG-CSFとMRJの動態についてはほとんど明らかにされておらず、子宮内膜でのG-CSFと
MRJ遺伝子の発現動態を明らかにすることは妊娠成立、維持機構を解明する一助となる。G-CSFおよびMRJ遺伝子の子宮内膜での発現を定量的に測定す
ることによって、ウシ妊娠との関連を明らかにする。
成果の内容・特徴
- 発情周期13~14日、妊娠20~140日齢の黒毛和種雌牛の子宮内膜における、定量的RT-PCR検討結果である。なお、子宮内に正常な受胎産物、胎子
が確認された個体を妊娠と判断している。G-CSFおよびMRJ遺伝子発現量はglyceraldehyde-phosphate-
dehydrogenase
(グリセルアルデヒドリン酸脱水素酵素:GAPDH)の発現を内部標準として算出した相対値を示している。ウシの子宮内膜は胎盤を形成する子宮小丘部とそ
れ以外で子宮腺が存在する子宮小丘間部に分けられるので、遺伝子発現の解析も両部位を分けて行っている。
- 子宮内膜におけるG-CSF、MRJ遺伝子発現は異なるパターンを示す(図1、2)。
- 子宮小丘部のG-CSF遺伝子発現は、発情周期13~14日、妊娠20~21、30~36日でほとんど変わらないが、妊娠48~49日では妊娠20~21
日よりも低い。子宮小丘間部のG-CSF遺伝子発現も発情周期と妊娠20~21、30~36日で変わらないが、妊娠48~49、74~140日では発情周
期よりも低い(図1)。
- MRJ遺伝子発現は子宮小丘部、子宮小丘間部ともに発情周期13~14日と妊娠20~21日で変わらないが、妊娠30日齢以降では妊娠20~21日よりも低い(図2)。
- 妊娠ステージとの関係からウシの妊娠過程において、G-CSFは初期の着床から初期の胎盤形成時期に、MRJは初期の着床時期に子宮内膜で高発現を示す。
成果の活用面・留意点
- ウシの妊娠成立、維持機構を解明する上での基礎的情報になる。
- 遺伝子発現の動態であるので、タンパク質発現の動態とズレがある可能性がある。
具体的データ
その他
- 研究課題名:ウシ初期胚と妊娠子宮におけるMRJ、G-CSF遺伝子発現の検討
- 課題ID:06-07-01-*-09-03
- 予算区分:交付金・所特定
- 研究期間:2003年度
- 研究担当者:大島一修、竹之内直樹(東北農研)、堂地修(酪農学園大)、渡辺裕子(生研機構)、福島護之(兵庫総農技セ)、小島孝敏、小松正憲(畜草研)、山本直幸