傾斜畑用土揚げ機
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要約
傾斜畑の表土を山側に飛ばす片排土仕様の一輪歩行型土揚げ機である。本機は、スイッチバック・ハンドルターン方式で方向転換するため、片排土での往復作業が可能で、傾斜畑でも安全に作業できる。また、1行程当たり揚土量が従来機の約2倍で労働負担が小さくなる。
- キーワード:傾斜畑、土揚げ機、旋回、労働負担
- 担当:近中四農研・傾斜地基盤部・機械施設研究室
- 連絡先:電話0877-62-0800、電子メールdaikoku@affrc.go.jp
- 区分:近畿中国四国農業・作業技術、共通基盤・作業技術、共通基盤・総合研究
- 分類:技術・普及
背景・ねらい
傾斜畑では、雨による土壌流亡の他、耕耘、整地、除草等の各種作業により、表土が物理的に傾斜方向に落下するため、毎年土揚げ作業が行われている。地域総合研究では、傾斜地施設を利用したトマトの夏秋作(養液土耕及び養液栽培)と夏季根株育成・冬季施設内でのふかし栽培等を行う作物とを組み合わせた、周年利用体系を構築中であり、作業面では運搬と並んで土揚げが大きな課題である。従来使用されてきた土揚げ機は操作性が悪く、揚土量も少なく、既に生産中止となっている。
そこで、歩行型管理機をベースに土揚げ作業が楽に効率よく行える機械を開発する。
成果の内容・特徴
- 本機は市販の一輪歩行型管理機をベースとし、3枚刃のロータで表土を山側にだけ飛ばす片排土仕様になっている。また、ロータの後方には、排土板と処理深さを調節する尾輪が装着されている(図1)。
- 旋回は、機体の方向とロータの回転方向は変えず、ハンドルだけを回転させるスイッチバック・ハンドルターン方式により行う。機体を持ち上げることがないので、傾斜畑でも安全に方向転換することができる(図1)。
- スイッチバックでは、ロータ回転が進行方向に対して逆になる。ダウンカット時には排土板を下ろし、排土板に表土を衝突させて山側に飛ばす。アップカット時には、排土板を上げて作業を行う。排土板の上げ下げが容易に行えるように、排土板の固定・解除は伸縮ピンで行う構造になっている(図1)。
- 揚土距離は、従来機(機関出力:1.84kW、ロータ:220mmφ三角板揚土ロータ)と同程度であるが、1行程当たり揚土量は約2倍である。また、作業能率は、従来機を約30%上回る(図2、表1)。
- 作業時の手腕の筋電位は従来機の約1/2である。また、心拍数増加率は20~30%減少し、労働負担が大きく軽減する(図3、表1)。
成果の活用面・留意点
- 25°までの傾斜畑での土揚げ作業に利用する。
- バック耕で作業することができるが、危険であるので行わない。
- 歩行型管理機をベースとして開発しているので、なた爪や培土板を装着することにより、一般的な中耕や畝立て・培土作業にも利用できる。
- 平成17年度市販予定。
具体的データ




その他
- 研究課題名:傾斜畑における歩行型管理機を用いた土揚げ作業の軽労化
- 課題ID:06-01-08-*-38-04
- 予算区分:地域総合支援経費(傾斜地特性野菜)
- 研究期間:2004年度
- 研究担当者:大黒正道、伊吹俊彦、田中宏明、角川 修、畔栁武司
- 発表論文等:1) 大黒ら(2003) 農機学会関西支部報95:66-69