シバ優占草地における肉用繁殖牛の放牧密度・放牧期別TDN過不足量の指針

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

シバ優占草地放牧時の補給や退牧を判断するために、放牧条件別に肉用繁殖雌牛の可消化養分総量(TDN)過不足量の指針を示す。TDN量は、高密度または放牧経過に伴い、また授乳期>妊娠末期>維持期、の順で不足する。指針等を基に補給不要の放牧期間を判定する。

  • キーワード:肉用牛、動物栄養、シバ優占草地、放牧密度、放牧期、TDN、過不足量
  • 担当:近中四農研・畜産草地部・栄養生理研究室
  • 連絡先:電話0854-82-1670、電子メールhayasaka@affrc.go.jp
  • 区分:近畿中国四国農業(畜産草地)
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

無施肥のシバ優占草地は、肉用繁殖牛の維持程度の可消化養分総量(TDN)があり、それ以上では補給が必要といわれるが、その時期や過不足量が生じる条件は不明である。そこで放牧中のエネルギー摂取状態をモニタリングし、それから補給や退牧を判断するために、肉用繁殖雌牛のTDN摂取量を決定する放牧密度(密度と表記)、放牧期(月、季節)、ウシの栄養期別の1日、1頭あたりTDN過不足量の指針を提示する。ここでTDN摂取量は、分布や現存量が不均一なシバ草地で刈り取り法による草量から求めると誤差が大きいので、新しい研究手法として既知のTDN要求量から放牧時の体重増減量に相当するTDN量を加減して求める。

成果の内容・特徴

  • 4.4haの放牧区(シバ優占草地3.7haでシバの面積は約80%))に黒毛和種繁殖雌牛を1年ごとに0.5頭/ha、1.0頭/ha、1.5頭/haで放牧した場合の放牧期別TDN摂取量(kg/頭/日)(=TDN要求量+体重増減TDN量-補給TDN量)を求め、一部補正と、7.1kg(8kg授乳牛の要求量)のTDN上限量を設定し、密度、放牧期別の1日1頭あたりTDN摂取量(kg)を推定し、ウシ栄養期別のTDN要求量を差し引いたTDN過不足量を表1に示す。
  • 表1からTDN不足量は、授乳期>妊娠末期>維持期、のウシの順であり、高密度または放牧経過に伴い増加する。
  • 補給作業による多労化や補給飼料経費負担を避けるため、補給が不要な放牧期間(入牧日は4月中旬)を、TDNを判断基準に、1放牧期間中の雌牛の平均TDN過不足量が正(表1)、2入牧時体重を基準に90%を下回らない体重変化、3子牛の発育性、等の条件で判定する。すなわち0.5頭/haは,維持・妊娠末期牛が11月まで、授乳牛が10月まで、1.0頭/haは、維持牛が11月まで、妊娠末期牛が10月まで、授乳牛が9月まで、1.5頭/haは、維持牛が9月まで、妊娠末期牛が8月まで、授乳牛が6月まで補給なしで放牧可能と判定する。

成果の活用面・留意点

  • 表1は補給や退牧を判断するためのTDN過不足量の指針として、主に中国四国地方(年平均気温15°C)のシバ草地放牧での活用が期待できる。
  • 本成果を含む詳細な情報は、マニュアル(近中四農研畜草部資料H16-2)にあり、近中四農研HP(http://www.naro.affrc.go.jp/warc/index.html)のトップページ「技術情報」よりダウンロードできる。

具体的データ

表1.各放牧密度における雌牛の放牧期別TDN摂取量と栄養期別過不足量の指針

その他

  • 研究課題名:シバ型草地における繁殖牛の栄養期別補助飼料給与技術の確立
  • 課題ID:06-07-02-*-05-03
  • 予算区分:21世紀6系
  • 研究期間:2001~2003年度
  • 研究担当者:早坂貴代史、西口靖彦、安藤 貞
  • 発表論文等:1) 早坂ら(2005)近中四農研研報 4:69-107.
                      2) 早坂ら(2005)近中四農研畜草部資料H16-2(マニュアル):1-33.