傾斜地カンキツ園の豪雨時地下水上昇により崩壊した小規模石垣の修復法

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要約

2004年台風23号によって、四国地域の傾斜地カンキツ試験園地では大量の表流水と併せて地下水の上昇に起因する土砂流亡や石垣の崩壊が生じている。被災した石垣で小規模な場合は地下水の排水機能を持つジオテキスタイルを用い、省力的に修復を行える。

  • キーワード:傾斜地、カンキツ園、豪雨、地下水流動、石垣、ジオテキスタイル
  • 担当:近中四農研・傾斜地基盤部・地域防災研究室
  • 連絡先:電話0877-63-8120、電子メールkawamoto@affrc.go.jp
  • 区分:近畿中国四国農業・生産環境(土壌・土木・気象)、共通基盤・総合研究
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

中山間の傾斜地域においてカンキツ経営安定のための連年果実生産システムを確立する上で、広範囲のマルチ設置圃場周辺における防災機能向上と安定生産を可能とする園地管理技術の高度化が必要である。傾斜地カンキツ園での防災管理マップの活用による予測に基づいた事前の対処策として、あるいは災害後においても活用できる地下水の排水機能の高い小規模石垣修復手法を示す。

成果の内容・特徴

  • 傾斜地カンキツ園において三次元地下水流動予測の結果をもとに作成した防災管理マップ(平成14年度成果情報)により要対策箇所、土砂流出箇所と判断された地点が2004年台風23号で被災したが、この箇所では地下水流動に起因する災害が生じたと推定される(図1)。
  • すなわち、要対策箇所近傍では台風21号(9/28-29)により地下水位が大きく上昇して園地が被災し、さらに台風23号(10/19-20)で地表面にほぼ達する最大水位(図2)となって、大きな被害が生じていることが認められる。要対策箇所、土砂流出箇所と判断されなかった地点の被災は大量の降雨の表面流出により発生したと考えられる。
  • 豪雨に伴う地下水上昇により生じた石垣崩壊のうち、小規模な部分の石垣については、今後の豪雨に際しても地下水の高排水機能を持つジオテキスタイル(排水材)を併用する事により、農家自身でも省力的で高排水機能の石垣修復ができる(図3)。
  • 既存石垣と修復箇所の境界部に加え、石垣背面基盤で観察された地下水浸出部に排水材(80×80mmの繊維排水材を厚さ10mmの短繊維不織布で巻いたもの)を用いることにより、基盤の不規則形状に柔軟に追従し、省力的な施工により被災石垣背面の要注意箇所(既存石垣との接合部、地下水浸出箇所)での迅速な排水が可能になる。

成果の活用面・留意点

  • 防災管理マップの活用で、要対策箇所と判断された箇所は災害に備えて、本石垣修復法によって事前に対策を講じておくことができる。
  • 石垣の修復では資材搬入が困難で基礎部が軟弱、排水路が未整備の地点における高機能修復には追加的な労力が必要となる。

具体的データ

図1 防災管理マップと園地被災状況

 

図2 要対策箇所近傍における地下水位測定結果

 

図3 ジオテキスタイルを併用する石垣修復

その他

  • 研究課題名:圃場水分の経時変化予測に基づくテラス防災管理技術の開発-地域防災-
  • 課題ID:06-02-02-(01)-07-04、06-01-07-(01)-28-04
  • 予算区分:地域農業確立総合研究(カンキツ連年生産)
  • 研究期間:2003~2007年度
  • 研究担当者:川本 治、島崎昌彦、吉村亜希子
  • 発表論文等:1) 川本ら(2004)平成16年度農土学会中四支部講要:90-92.