暗渠埋設資材や隔離床の底資材としての難分解処理モミガラの効果

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要約

高塩基性塩化アルミニウム溶液または塩基性ポリ硫酸第二鉄溶液をモミガラに混合、乾燥させると、モミガラの分解を遅らせることができる。暗渠埋設資材や隔離床の底資材に用いると、無処理モミガラに比べて排水が促進される。

  • キーワード:高塩基性塩化アルミニウム、塩基性ポリ硫酸第二鉄、モミガラ、排水促進
  • 担当:近中四農研・傾斜地基盤部・資源利用研究室
  • 連絡先:電話0877-62-0800、電子メールseikoyo@affrc.go.jp
  • 区分:近畿中国四国農業・生産環境(土壌・土木・気象)
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

ポリ塩化アルミニウムは、重粘土の団粒化やヘドロの凝集促進に用いられている。また、アルミニウムイオンや鉄イオンの有機物分解抑制効果が報告されている。一方、培地にこれらを添加するとCECが低下し、作物生育に影響を与えることも懸念されている。ここでは、これら資材の物理性改良効果を根域外で発揮させるために、高塩基性塩化アルミニウムまたは塩基性ポリ硫酸第二鉄溶液をモミガラに添加して表面を疎水化して分解を遅らせ、暗渠埋設資材や隔離床の底資材等の排水促進資材として用いるときの実用性を検証する。

成果の内容・特徴

  • 高塩基性塩化アルミニウム溶液をモミガラCECの10、25、50%相当量、塩基性ポリ硫酸第二鉄溶液をモミガラCECの20、50、100%相当量を、それぞれモミガラに混合し、乾燥させてモミガラを調整する(順にAl10、Al25、Al50、Fe20、Fe50、Fe100とする)(表1)。
  • モミガラを水田暗渠の埋設資材に用いたところ、調整モミガラ水田では無処理モミガラ水田(Cont.)に比べて、減水深が1.5~3倍に増加する。アルミニウム、鉄溶液ともに添加量が多いほど減水深が大きい。収量を上げるには、減水深20mm/day以上が望ましいことがわかる(図1)。
  • 水稲2作後の暗渠埋設モミガラの単位重量当たりの容積は、調整モミガラでは無処理モミガラに比べて大きく、孔隙の多さが排水促進効果を示す要因のひとつと考えられる(図2)。
  • 水田模擬カラム試験でも、間断潅水を繰り返した200日後において、Al10、Al25、Al50、Fe20、Fe50、Fe100モミガラカラムの排水速度は、無処理モミガラカラムのそれぞれ、4、7、7、9、9、7倍である。調整モミガラカラムの浸透水のECは、初期に一時的に無処理モミガラカラムの1.2~1.5倍に高まるが、それ以降は低く経過する。pHの低下は生じず、アルミニウムや鉄の溶脱量も少ない(データ略)。
  • 調整モミガラを濾紙に包み、休閑圃場作土に埋設して定期的に掘り出して残存割合を測ると、Al25、Fe20、Fe50モミガラの残存割合が高い。Al50、Al10、Fe100モミガラではあまり高くない(図3)。
  • 調整モミガラAl25、Al50、Fe100を隔離床の底部に敷いてトマトを栽培したところ、生育、収量ともに、Al25、Fe100培地では無処理モミガラ培地と同等かやや良好である(データ略)。また、培地の排水促進効果が認められ(図4)、24時間後の積算排水量にも差がある(データ略)。

成果の活用面・留意点

  • 排水促進効果、分解抑制程度、資材コスト、溶液添加時の一時的なECの高まりの土壌、水系、植物への影響等を考慮すると、Al25あるいはFe50モミガラが推奨される。
  • Al50モミガラ1m3の調整に要する資材費は約250円で、Fe50モミガラでは約200円である。
  • 排水不良水田の暗渠埋設資材や、水はけを好む植物の隔離床の底資材等、根域外で用いる。
  • 2年以上の排水促進効果の持続性は未検討である。

具体的データ

表1  Al,Fe処理モミガラの調整方法

 

図1 調整モミガラを暗渠埋設資材に用いた水稲栽培試験における平均減水深ともみ収量及び茎葉乾物重図2  暗渠埋設モミガラの風乾1gあたりの容積

 

図3 休閑圃場作土に埋設したモミガラの残存割合図 4 トマト栽培後の風乾培地に10000mlの水を 60秒間に注いだ場合の積算排水量

その他

  • 研究課題名:土壌物理性改善機能を有する難分解性資材の製造とその利用技術の開発
  • 課題ID:06-02-03-01-06-04
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2002~2005年度
  • 研究担当者:吉川省子、花野義雄、吉田正則