隔離培地耕における点滴潅水の低速化による環境負荷低減効果

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要約

隔離培地耕におけるマーガレット栽培において、必要な水を極力過不足なく低速で点滴潅水することにより、潅水量が慣行の半分で窒素溶脱がほとんど生じない環境負荷低減型栽培が可能である。

  • キーワード:点滴潅水、低速、環境負荷低減、隔離培地
  • 担当:近中四農研・傾斜地基盤部・資源利用研究室
  • 連絡先:電話0877-62-0800、電子メールseikoyo@affrc.go.jp
  • 区分:近畿中国四国農業・生産環境(土壌・土木・気象)、共通基盤・土壌肥料
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

花崗岩風化物(マサ土)のような粗粒質土壌では、排水性が高く、水と溶存肥料成分が抜けやすい。そのため、このような土壌では、根圏にゆっくりと水と肥料成分を供給する低速の点滴潅水が、水・肥料の効率的利用と環境負荷低減に繋がることが期待される。潅水速度を通常の点滴潅水の1/10程度(100~200ml/hr/吐出孔)とした点滴潅水(以後、低速点滴潅水と呼ぶ)を通常の点滴潅水と比較して、その環境負荷低減効果を検証する。

成果の内容・特徴

  • カラムに土壌を充填し、上部中央から低速と通常の2段階の潅水速度で点滴潅水を行う。一定時間後の水分分布を調べると、低速点滴潅水では浸透深が通常点滴潅水より浅く、表層の水分量がより高くなる(図1)。その後、水の再分配により両者の差は小さくなるものの、低速点滴潅水により水の縦浸透が抑制される。
  • 環境負荷低減型栽培を試みるために、隔離培地耕において低速点滴潅水(3ml/min/吐出孔)培地と通常点滴潅水(30ml/min/吐出孔)培地を設けて、必要な水を極力過不足ないように両培地に同量を潅水(173ml/day/plant、慣行の1/2程度)し、マーガレットを栽培する。低速点滴潅水培地では、曇天日には排水が生じるものの、通常点滴潅水培地に比べて排水量が大幅に抑制される(図2)。底面が飽和に達しないと排水しない隔離培地耕において、このように排水量に大きな差が生じる理由としては、通常点滴潅水では、低速点滴潅水に比べて縦浸透やフィンガー流(選択流)が生じやすいことが考えられる。
  • 2の隔離培地耕において、マーガレットの生育は低速点滴潅水培地がやや良好で、ばらつきが小さく(図3)、かつ慣行の畑培地耕と同程度の生育が得られる(データ略)。
  • 2の隔離培地耕において、マーガレットに必要な水を極力過不足なく潅水する低速点滴潅水培地では、通常点滴潅水培地に比べて排水量は1/10、硝酸態窒素の溶脱量は1/6である。さらに、慣行の畑培地耕における通常点滴潅水と比較すると、潅水量は1/2であり、硝酸態窒素の溶脱量は1%未満であり、ほとんど生じない(図4)。

成果の活用面・留意点

  • 保水性の低い土壌で得られた結果である。
  • 通常点滴潅水を多頻度に分けて行うと、低速点滴潅水に近い効果が得られる。

具体的データ

図1 点滴潅水カラム試験の水分分布 図2 隔離培地耕におけるマーガレット生育初期の日射量と排水量

 

図3  隔離培地耕のマーガレットの草丈 図4  隔離培地耕と慣行の畑培地耕における潅水量、排水量及び硝酸態窒素溶脱量

その他

  • 研究課題名:少量多頻度潅水施肥が土壌物理性等に及ぼす影響
  • 課題ID:06-02-03-01-07-04
  • 予算区分:高度化事業
  • 研究期間:2003~2005年度
  • 研究担当者:吉川省子、村口 浩(香川県農試)、渡辺修一、吉川弘恭、取出伸夫(三重大)、花野義雄、吉田正則