樹皮炭施用によるコマツナの硝酸塩含量低減
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要約
樹皮炭を容積比で10%、培養土に混合することで、コマツナの硝酸塩含量を約30%低減できる。この際、コマツナの新鮮重や草丈に悪影響は見られない。
- キーワード:コマツナ、硝酸塩、炭
- 担当:近中四農研・野菜部・畑土壌管理研究室
- 連絡先:電話0773-42-9909、電子メールjunichi@affrc.go.jp
- 区分:近畿中国四国農業・生産環境(土壌・土木・気象)、野菜茶業・野菜生産環境
- 分類:技術・参考
背景・ねらい
葉菜類に多く含まれる硝酸塩は、健康のためには摂取を抑制する必要があるとされている。しかし、多くの圃場で硝酸塩およびその供給源である窒素栄養の蓄積が進んでおり、そこで栽培された葉菜類は、硝酸を多く含んでいる。一方、炭には硝酸イオン吸着能があるとされている。そこで、コマツナの硝酸塩含量を減らすため、樹皮炭を施用して栽培し、その硝酸低減効果を明らかにする。
成果の内容・特徴
- 収穫したコマツナを、外葉およびそれを除いた内側部分である調製株に分け、硝酸塩含量を測定すると、調製株および外葉の硝酸塩含量は、樹皮炭を10%(容積比)培養土に混合することにより約30%低減する。外葉の硝酸塩含量は、調製株のそれの約1.5倍である。(図1)。
- 樹皮炭施用により栽培後の土壌中の無機態窒素も約50%に減少する。内訳で見ると、アンモニア態窒素はほとんど差がないが、硝酸態窒素は大きく減少する(図2)。硝酸態窒素が樹皮炭に強く吸着されていて、抽出されにくいためと考えられる。
- コマツナの生育に対して樹皮炭による悪影響は見られない(図3,4)。外観についても差はない。
成果の活用面・留意点
- 窒素蓄積土壌における葉菜類の硝酸塩低減栽培のための基礎的データとする。樹皮炭の必要施用量については、今後検討する必要がある。
- 細粒褐色低地土を充填したプランターを用い、基肥として硝酸系化成肥料(窒素-リン酸-カリ:16-10-14)を窒素として16kg/10aとなるよう施用し、10月1日に播種してガラス室内で栽培し、40日後に収穫・分析した結果である。反復数は4とした。土壌pHは樹皮炭混合前で6.2、混合後で6.3で、硝酸態窒素含量は施肥前で37.3mg/kgである。
- 用いた樹皮炭はナラ、クリ等の広葉樹の樹皮を200~450℃で炭化したものである。粒径は5mm以下で、柱状および板状。仮比重は約0.2。価格は、袋詰め30 Lで700円程度である。
具体的データ


その他
- 研究課題名:有機物資材の種類および施与形態等による影響の解明と硝酸塩濃度制御技術の開発
- 課題ID:06-06-03-01-08-04
- 予算区分:高度化事業
- 研究期間:2002~2004年度
- 研究担当者:池田順一、堀 兼明、須賀有子、福永亜矢子