土壌窒素多量蓄積圃場における高C/N未分解有機物を用いた葉菜類の硝酸塩低減

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要約

家畜糞堆肥の多量施用により、無機態および有機態窒素が多量に蓄積した圃場において栽培される葉菜類の硝酸塩含量の低減化のためには、稲ワラ、小麦ワラなどの施用が有効である。夏季は高C/N有機物施用後10日以内、秋季は1ケ月程度後におけるは種が適当である。

  • キーワード:家畜糞、高C/N未分解有機物、コマツナ、チンゲンサイ、硝酸塩
  • 担当:近中四農研・野菜部・畑土壌管理研究室
  • 連絡先:電話0773-42-0109、電子メールkhori@affrc.go.jp
  • 区分:近畿中国四国農業・生産環境(土壌・土木・気象)、野菜茶業・野菜生産環境
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

野菜に対しては、安全安心に関する消費ニーズが高い。硝酸塩の過剰摂取は人体にとって好ましくないとされており、硝酸塩含量が高い葉菜類に関しては食生活における位置づけが大きいことから、硝酸塩含量の低減栽培技術が要望されている。中でもチンゲンサイやコマツナは、食品成分表によれば硝酸塩含量が5000mg /kgFW と最も高い。野菜栽培圃場では減化学肥料栽培や有機栽培を志向する傾向が強まっており、家畜糞堆肥等の多量施用により窒素が過剰に蓄積している場合が少なくない。そこで、窒素が過剰に蓄積した条件において小麦ワラなどの高C/N未分解有機物の施用により、土壌中の過剰の無機態窒素を有機化させ、葉菜類の低硝酸塩化技術の開発をめざす。

成果の内容・特徴

  • 家畜糞堆肥が多量に連用され土壌窒素が多量に蓄積した農家圃場の土壌では、圃場容水量の水 分に調整した後に窒素の無機化が認められる。この土壌に対して、稲ワラ、小麦ワラなどの高C / N未分解有機物を施用した場合、稲ワラでは15日以降に、小麦ワラでは5日および15日以降 に窒素の有機化が認められる。(図1)
  • この農家圃場の土壌を用いコマツナを夏季に無施肥条件で栽培すると、高C/N未分解有機物 施用後10日以内にコマツナをは種した場合は硝酸塩含量低減効果があるが、15日後は種では低 減効果が認められないことから、有機物施用後10日頃までの早い時期には種することが望まし い(図2)。この場合、有機物施用後2日目には種してもコマツナの発芽障害や生育障害はない。
  • 家畜糞堆肥の多量施用の条件下で秋季にチンゲンサイを栽培すると、高C/N未分解有機物施 用後2週間後のは種では硝酸塩含量低減効果が認められず、4週間後は種で低減効果が認められ る(図3)。

成果の活用面・留意点

  • 土壌への窒素過剰蓄積対策としては堆肥や窒素肥料の投入の中止が基本であるが、加えて積極 的にコマツナやチンゲンサイの硝酸塩含量を低減するための技術として適用できる。有機物施用 後のは種までの適正期間が作期によって異なるので留意する。
  • 高C/N未分解有機物の適正施用量は詳細には検討していないので、当面、風乾物500kg/10a程 度とし土壌に鋤き込む。モミガラは前処理により効果が変わると思われるので更に検討が必要。
  • 今後、土壌に蓄積した有機態窒素含量と無機態窒素含量の両者の簡易評価に基づく、高C/N未分解有機物の必要量判定技術の策定が必要である。
  • C/N比は稲ワラ(53)、モミガラ(139)、小麦ワラ(131)、乾燥青刈エンバク(36)、乾燥ササ(29)である。

具体的データ

図1 コマツナは種時の土壌中の硝酸態窒素含量

 

図2 夏季コマツナ葉柄の硝酸塩含量

 

図3 高C/N 未分解有機物施用による秋季チンゲンサイ葉柄の硝酸塩含量

その他

  • 研究課題名:有機物資材の種類および施与形態等による影響の解明と硝酸塩濃度制御技術の開発
  • 課題ID:06-06-03-01-08-04
  • 予算区分:高度化事業
  • 研究期間:2002~2004年度
  • 研究担当者:堀 兼明、須賀有子、福永亜矢子、池田順一