堆肥散布作業能率を規定する要因と作業時間・散布面積の推定モデル

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要約

堆肥散布作業能率(圃場単位)は、堆肥積み替え1回当たり面積、堆肥積み替え場所などに、組作業能率(作業日単位)は、1筆当たり面積、圃場分散、実作業時間、経験年数などに規定される。圃場作業時間と組作業散布面積は、推定モデルから算出できる。

  • キーワード:堆肥散布、作業能率、圃場作業時間、散布面積
  • 担当:近中四農研・総合研究部・経営管理研究室
  • 連絡先:電話084-923-4100、電子メールninoue@affrc.go.jp
  • 区分:近畿中国四国農業・農業経営、共通基盤・経営
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

数集落を範囲とする堆肥利用組織では、堆肥散布作業能率の向上と堆肥運搬・散布計画の策定が、経済性向上の重要な条件になっている。とりわけ、中山間水田地域では、作業対象とする圃場筆数が数百に及ぶうえ、個々の圃場条件が多様であることから、圃場単位で管理・評価・計画することが重要である。そこで、中山間水田地域の堆肥利用組織を対象に、堆肥散布作業能率を規定する要因を明らかにし、圃場作業時間ならびに組作業散布面積の推定モデルを導出する。

成果の内容・特徴

  • 圃場単位の堆肥散布作業能率:C (=圃場面積÷圃場作業時間、平均87.6a/時、標準偏差20.9、48kW・自走式マニュアスプレッダ1台、平均散布量1.6t/10a)を被説明変数とする推定を、表1左側の変数を説明変数の候補とする両対数型の線形回帰モデルにより行う。C を規定する要因は、有効作業量のほか、堆肥積み替え1回当たり面積、堆肥積み替え場所、不規則な作業行程の有無である(表1右側)。
  • 表1より、圃場作業時間の推定モデルが導出される(表2)。圃場作業時間(=直進・旋回実作業時間+圃場内移動時間+堆肥補給のための圃場外移動時間)は、「圃場面積」、「有効作業量」、「堆肥積み替え回数」、「堆肥積み替え場所」を設定することで算出できる。
  • 作業日単位の組作業能率:E (=散布面積÷延べ作業時間、平均8.0a/人・時、標準偏差2.4)を被説明変数とする推定を、表3左側の変数を説明変数の候補とする両対数型の線形回帰モデルにより行う。E を規定する要因は、1筆当たり面積、圃場分散(圃場分散度、センター圃場間距離)、基準散布量に加えて、実作業時間、経験年数、堆肥散布の対象となる作物、作業期初日・最終日である(表3右側)。
  • 表3より、組作業散布面積の推定モデルが導出される(表4)。各作業日で対象とする圃場群内の散布面積は、作業日単位の「作業人員・時間」、「圃場分散(圃場分散度、センター圃場間距離)」、「経験年数」、「作業期初日・最終日または中間日」、「基準散布量」を設定することで算出できる。

成果の活用面・留意点

  • 作業能率を規定する要因は、実際の作業における参考データとして、推定モデルは、堆肥運搬・散布計画の支援手法を策定する際のモデルとしてそれぞれ活用できる。
  • 成果の内容・特徴1、2の「圃場作業時間」には、堆肥の補給時間、次の圃場への移動時間、待ち時間、打ち合わせ時間、機械の調整時間および休憩時間を含まない。
  • マニュアスプレッダは、48kW・自走式1台を基準とする。組作業の構成は、堆肥積み込み作業(1人、ホイールローダ)、堆肥運搬作業(2~3人、2tダンプ)、堆肥積み替え作業(1人、キャリアブリッジ+トラクタ)、堆肥散布作業(1人)とする。
  • 平均圃場面積が20a前後で、交通に特段の不便がない事例であれば、中山間地域に限らず適用できる。

具体的データ

表1 圃場単位の堆肥散布作業能率を規定する要因 表2 圃場作業時間の推定 モデル

 

表3 作業日単位の組作業能率を規定する要因

 

表4 組作業散布面積の推定モデル

その他

  • 研究課題名:数集落からなる地域内における堆肥流通計画支援手法の策定
  • 課題ID:06-01-03-*-08-04
  • 予算区分:バイオリサイクル・交付金
  • 研究期間:2002~2004年度
  • 研究担当者:井上憲一、棚田光雄
  • 発表論文等:1) 井上 (2004) 農業経営研究 42(1):35-38.
                      2) 井上 (2004) 農業経営通信 222:22-25.