棚田ライシメータを用いた傾斜地水田の地表および地下の洪水流出モデル

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要約

棚田ライシメータでの地表・地下の洪水流出観測結果から、地下流出は降雨に反応した早い流出と定常的な遅い流出があることを明らかにし、この特性を再現するため、従来モデルに、畦畔の地下浸透孔および地下流出部のタンク・流出孔に改良を加えたモデルを構築する。

  • キーワード:傾斜地水田、タンクモデル、洪水流出、流出特性
  • 担当:近中四農研・傾斜地基盤部・地域防災研究室
  • 連絡先:電話0877-63-8120、電子メールyosimura@affrc.go.jp
  • 区分:近畿中国四国農業・生産環境
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

傾斜地域においてはその立地条件の不利さから耕作放棄をはじめとする管理状況の変化が著しい。特に傾斜地水田の管理の変化は流出特性の変化につながりこれらは洪水災害などの危険性を増大させる。そのため管理による流出変化を検討するためには傾斜地水田の流出をモデル化することは重要である。そこで水収支が確実に把握できる棚田ライシメータの観測結果から傾斜地水田の地表流出および地下流出の両方の流出特性を再現できるモデルを作成する。

成果の内容・特徴

  • 棚田ライシメータ(図1)での洪水時の地表・地下流出の観測結果、1)地下流出は降雨に反応した早い流出と定常的な遅い流出に分けられ、2)全表面における畦畔法面の占める面積が多く、畦畔からの浸透が大きい特徴がある。
  • 1に示した流出特性を再現するために既存の畦畔サブタンクを持つ棚田タンクモデルにおいて1) 早い地下流出成分と遅い地下流出成分を表すために、作土層タンクの流出孔を1つ増やしかつ心土層タンクを設ける、2)畦畔部からの浸透を表すために畦畔タンクに浸透孔を付け、浸透水は直接作土層のタンクに流入させる、この2点の改良を行う(図2)。
  • 改良型の棚田タンクモデルを観測値に適用したところ、短期流出では地表流出および地下流出が同時に再現でき、また、パラメータz2,c1は圃場管理状態の変化を示している(図3)。

成果の活用面・留意点

  • このモデルを用いることで傾斜地水田の管理変化による流出の変化の検討に役立つ。
  • 洪水流出特性の検討のため短期流出のみ対象にしており、長期流出への適応のためにはさらにデータの蓄積が必要である。
  • ライシメータの観測結果を元にしているため、現地に適用するときには観測データと照らし合わせたパラメータの検討が必要である。

具体的データ

図1.棚田ライシメータ図 図2.改良型棚田タンクモデル図

 

図3.改良型棚田タンクモデルによる解析結果

その他

  • 研究課題名:傾斜地農地の保全管理指針策定技術の開発
  • 課題ID:06-02-02-01-05-04
  • 予算区分:運営費交付金
  • 研究期間:2002~2004年度
  • 研究担当者:吉村亜希子、川本 治、島崎昌彦、吉迫 宏(農業工学研究所)
  • 発表論文等:吉村ら(2004)平成16年度農業土木学会大会講演要旨集:862-863