国内産Olpidium brassicae sensu latoのアブラナ科系統と非アブラナ科系統は別種である

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要約

国内産O. brassicae sensu latoは寄生性からアブラナ科系統と非アブラナ科系統に分かれ、アブラナ科系統はヘテロタリズム,非アブラナ科系統ではホモタリズムの交配様式で休眠胞子が形成され、rDNA-ITS領域の相同性が低いことから両系統は別種である。

  • キーワード:Olpidium brassicae sensu lato、アブラナ科系統、非アブラナ科系統、交配様式、rDNA-ITS領域
  • 担当:近中四農研・特産作物部・ウイルス病研究室
  • 連絡先:電話0877-63-8130、電子メールtsasaya@affrc.go.jp
  • 区分:近畿中国四国農業・生産環境(病害虫)、共通基盤・病害虫
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

Olpidium brassicae sensu latoは直接作物に病害を引き起こさないが、レタスビッグベイン病のウイルスをはじめとする数種のウイルスを媒介することで農業上問題となっている。本菌はアブラナ科植物を好適宿主とするアブラナ科系統と、アブラナ科植物を好適宿主としない非アブラナ科系統に区別され、非アブラナ科系統はウイルスを媒介するが、アブラナ科系統は媒介しない。以前、両者は異種と考えられ、Pleotrachelus brassicae(アブラナ科系統)とP. virulentus(非アブラナ科系統)という別名で呼ばれたが、現在、両者は同一種と考えられ、学名としてはO. brassicaeが用いられている。しかしながら、これら2系統が同一種であるかは明確に確認されていない。そこで、両系統の異同を検討するため、両系統の交配様式およびrDNA-ITS領域の塩基配列の相同性を比較した。

成果の内容・特徴

  • 国内の耕地土壌から分離された分離株は、全てマクワウリとササゲに寄生するものの、キャベツおよびダイコンに対する寄生性の差から、アブラナ科系統と非アブラナ科系統の2つに分けられる(表1)。
  • キャベツ圃場の土壌から分離されたアブラナ科系統の単遊走子のう9分離株(CBG-1~5およびYR-1~4)は、単独でキャベツに接種すると休眠胞子を形成しないが、相互に混合して接種すると、組み合わせによっては休眠胞子を形成する(表2)。一方、非アブラナ科作物の土壌から分離された非アブラナ科系統の単遊走子のう分離株は、すべて単独で休眠胞子を形成する(データ略)。
  • Olpidium brassicae 感染根から放出された遊走子を回収し、Whiteら(1990)のプライマーITS1(5'-TCCGTAGGTGAACCTGCGG-3')およびITS4(5'-TCCTCCGCTTATTGATATGC-3')を用いてrDNA-ITS領域をPCRで増幅し、その塩基配列を解読すると(表3)、アブラナ科系統のrDNA-ITS領域は600塩基対、非アブラナ科系統は632塩基対からなり、同一系統内では塩基配列の相同性が98.5~99.8%、系統間では80.2~81.8%と低い。
  • Olpidium brassicae sensu latoのアブラナ科系統はヘテロタリズム、非アブラナ科系統はホモタリズムの交配様式を持ち、両者のrDNA-ITS領域の相同性が低いことより、両系統は別種である。Olpidium brassicae sensu latoの分類を再考する必要がある。

成果の活用面・留意点

  • rDNA-ITS領域の比較で両種を識別できる。

具体的データ

表1. 実験に供試したOlpidium brassicae の来歴と寄生性

 

表2.アブラナ科系統の単遊走子のう分離株の混合接種による休眠胞子形成

 

表3.Olpidium brassicae のrDNA-ITS 領域の塩基配列の相同性

その他

  • 研究課題名:Olpidium brassicae の各種植物における感染動態
  • 課題ID:06-08-01-*-10-03
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2003年度
  • 研究担当者:笹谷孝英、高山智光、小金澤碩城
  • 発表論文等:1) 小金澤他. (2004) 日植病報. 70: 307-313.