タバコわい化ウイルスはレタスビッグベインウイルスの1系統(タバコ系統)である
※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。
要約
タバコわい化ウイルス(TStV)とレタスビッグベインウイルス(LBVV)の外被タンパク質遺伝子は1,194塩基、397アミノ酸から成る。両者の相同性は高く、系統樹解析では同一クラスター内に存在することより、TStVはLBVVの1系統(タバコ系統)である。
- キーワード:レタスビッグベインウイルス、タバコわい化ウイルス、Varicosavirus 属
- 担当:近中四農研・特産作物部・ウイルス病研究室
- 連絡先:電話0877-63-8130、電子メールtsasaya@affrc.go.jp
- 区分:近畿中国四国農業・生産環境(病害虫)、共通基盤・病害虫
- 分類:科学・参考
背景・ねらい
Varicosavirus 属のウイルスは菌媒介性ウイルスで、膜構造を持たない2分節のマイナス鎖RNAウイルスである。基準種はレタスビッグベインウイルス(LBVV)で、タバコわい化ウイルス(TStV)が暫定種として含まれている。TStVとLBVVは血清学的に近縁であるが、宿主範囲が異なるために異種のウイルスと考えられている。そこで、TStVの外被タンパク質の塩基配列を解読し、LBVVとの異同を明らかにする。
成果の内容・特徴
- TStVの5分離株は汁液接種でタバコ(Nicotiana tabacum L.)およびN. benthamiana に全身感染するが、レタス(Lactuca sativa L.)には全身感染しない。一方、LBVVの4分離株はタバコに全身感染しないが、レタスおよびN. benthamiana に無病徴全身感染する(表1)。
- TStV感染タバコあるいはLBVV感染レタス葉から全RNAを分離し、ランダムヘキサマーでcDNAを合成後、3種類のLBVV特異的なプライマーを用いてPCRを行い、外被タンパク質領域を解読すると、TStVおよびLBVVの外被タンパク質はすべての株で1,194塩基、397アミノ酸から成っている。
- TStVの5分離株およびLBVVの8分離株の外被タンパク質の塩基配列およびアミノ酸配列の相同性は、TStVとLBVV間では95.6-96.5%および97.2-98.7%と高い相同性を示す(表2)。また、これらの塩基配列を用いてNJ法で系統樹を作成すると、TStVはひとつのクラスターを形成するが、そのクラスターはLBVVクラスター内に存在し、TStVはLBVVのスペイン分離株(ALM1、ALM2、GAL1およびMUR1)よりは日本分離株に近縁である(図1)。
- 外被タンパク質の遺伝子解析よりTStVは独立種ではなく、LBVVの1系統である。TStVはLBVVが感染しないタバコに感染することよりLBVVのタバコ系統とすることが妥当である。
成果の活用面・留意点
- TStV-No88とLBVV-Kaの他の領域も高い相同性を示すので(長瀬ら、2004)、外被タンパク質遺伝子のみの比較で、TStVはLBVVの系統であることが考察できる。
- TStVはLBVVの1系統であるが、TStVがレタス圃場で、あるいはLBVVがタバコ圃場で蔓延することはない。
具体的データ


その他
- 研究課題名:病原ウイルスの特性解明と診断法の開発
- 課題ID:06-04-03-01-01-02
- 予算区分:行政対応特別研究
- 研究期間:2000~2002年度
- 研究担当者:笹谷孝英、野見山孝司、石川浩一、小金澤碩城