軟質小麦の粉の篩抜け性とタンパク質含有率の関係

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要約

篩抜け粉率で評価した軟質小麦の粉の篩抜け性は、同一品種内ではタンパク質含有率の向上によって改善される。アラビノキシラン含有率の影響はタンパク質含有率により異なる。タンパク質含有率は小麦粉の粒径(粒度)と正の相関があり、粒度が大きくなると篩抜け性が良くなる。

  • キーワード:コムギ、軟質、小麦粉、篩抜け性、タンパク質、粒度、アラビノキシラン
  • 担当:近中四農研・作物開発部・小麦育種研究室
  • 連絡先:電話084-923-4100、電子メールtakata@affrc.go.jp
  • 区分:近畿中国四国農業・作物生産(冬作)、作物・冬作物
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

国産小麦は一般に輸入小麦銘柄に比べて製粉性(篩抜け性)が劣ることが指摘されており、製粉性の改善が強く望まれている。国産小麦の篩抜け性の低さは栽培地域によって差が見られ、低タンパク質含有率がその原因の一つとして指摘されているが、具体的データがない。また品種間の製粉性(歩留)の差には小麦粉のアラビノキシラン含有率が関与していることが報告されている。そこで、栽培環境が異なる小麦を用いて篩抜け性に影響する要因を解析する。

成果の内容・特徴

  • 小麦粉の篩抜け性は、ビューラーテストミルで製粉した60%粉を使用し、70NGGの篩を通過した小麦粉100gを再度70NGGで5秒間篩い、小麦粉の篩抜け粉率として表す。
  • 栽培条件を変化させた「ふくさやか」と「農林61号」では,子実タンパク質含有率と篩抜け粉率の間に有意な正の相関(r=0.59**及びr=0.75***)がある(表1)。またタンパク質含有率と小麦粉の粒径(粒度)の間及び粒度と篩抜け粉率の間にも有意な正の相関がある(表1)。このことから、タンパク質含有率を高めると粒度が大きくなり篩抜け性が向上すると期待される。
  • 産地別に見ると、いずれの産地においても「ふくさやか」と「農林61号」の子実タンパク質含有率と篩抜け粉率の間に正の相関(r=0.51*~0.87**)がある(図1)。なお、産地間で回帰直線の傾きに有意差はない。
  • タンパク質含有率が異なる「ふくさやか」においては、アラビノキシラン含有率と篩抜け粉率の間に相関が認められない(表1)。タンパク質含有率が7.8-8.0%及び8.4-8.6%のサンプルでもアラビノキシラン含有率と篩抜け粉率の間に有意な相関はないが、タンパク質含有率9.3-9.6% の9点ではr=-0.70*の相関が認められ(表2)、タンパク質含有率によって篩抜け性へのアラビノキシラン含有率の影響が異なる。

成果の活用面・留意点

  • 篩抜け性を向上させるための栽培技術の開発や品種育成の際に情報として活用する。
  • 産地による篩抜け性の差及びアラビノキシラン含有率の変動要因は明確になっていない。
  • 国産小麦の製粉性の抜本的な改善には、硬質化(粒度の増大)やアラビノキシラン含有率の低減などの遺伝的な改良が必要である。

具体的データ

表1.「ふくさやか」と「農林61号」における製粉性の指標間の相関係数

 

図1 産地の異なる「ふくさやか」と「農林61号」の子実タンパク質含有率と篩抜け粉率の関係

 

表2.異なるタンパク質含有率での「ふくさやか」の製粉性の指標間の相関係数

その他

  • 研究課題名:小麦成分組成の遺伝的改変による加工適性の改善
  • 課題ID:06-03-03-01-13-04
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2001~2005年度
  • 研究担当者:高田兼則、谷中美貴子、石川直幸
  • 発表論文等:高田ら (2004) 育種学研究 6 (別2):318