黒毛和種のPPARγ2変異牛ではバラ厚が増加する
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要約
黒毛和種のPPARγ2にはアミノ酸置換を伴う変異が存在し、この置換をヘテロに持つ肥育牛のバラ厚は有意に増加する。
- キーワード:ウシ、PPARγ2、黒毛和種、産肉形質、バラ厚
- 担当:近中四農研・畜産草地部・産肉利用研究室
- 連絡先:電話0854-82-2047、電子メールaikawa@affrc.go.jp
- 区分:近畿中国四国農業・畜産草地、畜産草地
- 分類:科学・参考
背景・ねらい
近年、脂肪細胞の分化に関する分子生物学的研究が急速に進展し、PPARγ2が脂肪細胞分化のマスターレギュレーターであることが示されている。一方、我々はPPARγ2にアミノ酸置換(18番目のアラニンがバリンに置換、以下Ala18Val置換と略記)を伴うヘテロ型変異体(Ala/Val型と略記)が黒毛和種内に存在することを見出している。PPARγ2の生理作用を考慮すれば、そのAla18Val置換が肥育牛の産肉形質に影響する可能性が十分考えられる。そこでAla/Val型の産肉形質を非変異体(Ala/Ala型と略記)の産肉形質と比較する。
成果の内容・特徴
- 既にAla/Val型であることが分かっている但馬系黒毛和種の種雄牛Sを種々のメス牛に交配し、畜産農家において生産され、肥育された産子139頭の遺伝子型と市場における産肉形質(冷屠体重・ロース芯面積・バラ厚・皮下脂肪厚・歩留基準値・BMS)を比較する(図1)。
- Ala/Ala型とAla/Val型の産肉形質を比較した結果、Ala/Val型ではバラ厚が1%水準で 有意に増加し、冷屠体重とBMSが増加傾向(P<0.10)を示す(表1)。
- 冷屠体重の増加は、他の産肉形質にも影響を与えることから、各産肉形質について冷屠体重による補正を行ったところ、バラ厚にのみ有意差が観察された(表2)。このことから、Ala/Val型におけるバラ厚の増加は、冷屠体重の増加による副次的結果ではなく、Ala18Val置換そのものによる生理的変化に起因することが推定される。
成果の活用面・留意点
- 脂肪蓄積関連遺伝子の産肉形質にかかわる基礎的情報として有用である。
- この、Ala18Val置換の効果は、但馬系種雄牛1頭を父とする産子139頭についての調査結果であり、他の種雄牛における使用についてはさらに調査が必要である。
具体的データ



その他
- 研究課題名:和牛における脂肪蓄積遺伝子の筋肉内発現による脂肪交雑判定技術の開発
- 課題ID:06-07-03-*-05-03
- 予算区分:形態・生理
- 研究期間:2003年度
- 研究担当者:相川勝弘、太田垣進(兵庫総農技セ)、谷本保幸(家畜改良セ宮崎)、柴田昌宏、松本和典、
寺田文典(農研機構本部)
- 発表論文等:1) 相川ら (2004)日畜会報 75:25-29.