傾斜地における不整形区画水田の作業時間の推定法

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要約

傾斜地の不整形区画水田における乗用機械を用いた代かき、田植え、収穫の作業時間を推定できる。不整形区画水田における作業時間は、一筆の面積が7~10a程度であれば、2~3a程度の狭小な区画に比べ、約15~30%ほど短縮する。

  • キーワード:傾斜地、不整形区画水田、乗用機械、作業時間、圃場面積、受託圃場
  • 担当:近中四農研・傾斜地基盤研究部・基盤整備研究室
  • 連絡先:電話0877-63-8119、電子メールhosokawa@affrc.go.jp
  • 区分:近畿中国四国農業・作業技術
  • 分類:行政・参考

背景・ねらい

傾斜地では、受託組織が水稲作の新たな担い手として活躍している。今後、高齢化に伴い受託組織へ作業委託を希望する農家が、一層、増えることが予想されるが、作業条件にかかわらず全ての希望圃場を引き受けることは、オペレータの労働時間の過度な増加など労働環境の悪化につながる。したがって、圃場作業時間等の面から受託圃場を取捨選択することも検討する必要がある。しかし、傾斜地に多い不整形区画に関する圃場面積と作業時間の関係は明らかになっていない。このため、代かき、田植え、収穫作業に関し、不整形区画を対象に圃場面積に応じた作業時間の推定式を求め、受託圃場の選定の一助とする。

成果の内容・特徴

  • 傾斜地における不整形区画の推定作業時間(T:min/10a)は、①圃場面積(A:a)および整形圃場の長短辺比に替わる係数(N:当該圃場と同一面積、同一周囲長を持つ楕円の長軸長/短軸長)から有効作業効率(Ec:%)=a1+a2・logA+a3・logNを求め、②作業速度(V:m/s)、作業幅(B:m)をもとに、T=10,000/6・V・B・Ecから算定する。なお、a1、a2、a3は表1に示すとおりである。
  • 作業時間(min/10a)の推定値/実測値は、代かき1回目87~109%、代かき2回目78 ~116%、田植え92~115%、収穫85~134%であり、概ね精度良く推定可能である(図1)。
  • 面積が狭小な1.7aに比べ、6.7aの圃場では、作業時間(min/10a)は、約15~30%ほど短縮(代かき約20分(1,2回合計)、田植え15分、約収穫20分)する(表2)。
  • 圃場面積が7~10a程度であれば、2~3a程度の狭小な区画に比べ作業時間の短縮効果は大きい。したがって、受託圃場の面積は、一筆7~10a程度以上あれば、作業時間の面で効率的である(図2)。

成果の活用面・留意点

  • 受託圃場等における作業時間の推定に利用できる。
  • 田植えは、移植作業のみであり、苗積載・苗積替作業は含まない。また、収穫は機械刈り取り作業のみであり、籾の排出作業は含まない。
  • 推定式の適用可能な乗用機械は、トラクタ17kW~19kW(ロータリ幅1,500~1,600mm)、乗用4条田植機、2条刈コンバインである。

具体的データ

表1 作業時間(T)の推定式 図1 作業時間の実測値と推定値の比較

 

表2 推定式の具体的適用例 図2 圃場面積と作業時間との関係

その他

  • 研究課題名:効率的で安全な作業のための傾斜地における水田のほ場構造条件の解明
  • 課題ID:06-02-01-01-03-04
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2000~2005年度
  • 研究担当者:細川雅敏、井上久義、内田晴夫