ウンシュウミカンの隔年結果是正技術の開発要素と経営安定のための目標単価

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要約

近年の全国単位の隔年結果変動幅は小さくなっているが、是正を必要とする農家割合は逆に高まっている。農家は収量安定とともに糖度向上による高品質化を同時に満たす隔年結果是正技術を求めており、販売単価への反映を希望している。農家が目標とする販売単価水準は産地における主力品種の平均単価に近い。

  • キーワード:ウンシュウミカン、隔年結果、アンケート調査、栽培方向、目標単価
  • 担当:近中四農研・総合研究部・園芸経営研究室
  • 連絡先:電話084-923-4100、電子メールwenarc-seika@naro.affrc.go.jp
  • 区分:共通基盤・総合研究、近畿中国四国農業・農業経営
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

ウンシュウミカンの隔年結果が起こす生産量ならびに果実品質の年次変動は、販売価格の変動をもたらし、農家収益の長期的な不安定化 の要因として問題視されている。ここでは隔年結果について特徴的な産地へアンケート調査を実施し、経営安定のために隔年結果是正技術開発に期待する要素、 ならびに経営安定のために農家が目標として考えている販売単価等について、農家意識の面から解析する。

成果の内容・特徴

  • 隔年結果が顕著な時期(1992∼2001年)に比べ、2002年以降は全国レベルでの反収は安定化する傾向が見られる。しかし隔年結果を是正する必要があると考える農家割合は逆にしだいに高まっている(図1)。また隔年結果に関する新聞報道の記事件数も多く、これらのことは隔年結果が個々の農家にとっては依然きわめて重要であり、経営の不安定化要因として解決を図るべき大きな問題であることを示している。
  • 隔年結果によって収益に影響があると農家が考えている主な要素は「収穫量」(56.8%)と「単価」(53.6%)である(図2左)。一方、収益を向上させるために今後重視すると農家が考えている主な要素は「糖度」(56.9%)と「糖酸比」(51.4%)である(図2右)。したがって農家は隔年結果を収穫量と単価の問題と考えており、農家は隔年結果是正技術として収量安定と品質向上を満たすことを期待し、それが単価に反映されることを求めていると考えられる。
  • 隔年結果是正を望み、しかも隔年結果する園地をもつ農家割合は71.1%であり、この層が是正技術を受け入れる受容層となり得ると考えられる。この層は過去10年前から相当割合が是正を望み続けていて、「収穫量」が隔年結果によって収益に影響がある要素と強く考えている。この層が望む隔年結果是正の基本方向は、連年安定結実技術への期待が隔年交互技術などに比べて高い(表1)。
  • 農家経営を安定させるために産地における目標販売単価については、静岡県三ヶ日町の場合、農家の目標単価は、同地域の主力である高糖系品種「青島温州」の平均単価に近い(図3)。こうした傾向は他の産地(香川坂出)でもうかがうことができ、ここれらのことから、農家は自分の産地の主力品種におけるこれまでの平均単価を目標にしていると考えられる。

成果の活用面・留意点

  • 試験研究担当者が各産地へ技術を導入する場合、農協等が果樹産地構造改革計画の策定で経営安定のための目標単価の設定する場合に活用できる。
  • 隔年結果是正技術の開発と活用に参考にすることができる。

具体的データ

図1 反収の変動係数、是正を望む農家割合、新聞記事の割合

 

図2 収益に影響を及ぼす要素、収益向上のため重視する要素

 

表1 隔年結果是正技術の受容層の特徴

 

図3 産地の平均単価と農家の目標単価

 

その他

  • 研究課題名:連年安定生産技術における生産・経営目標の策定
  • 課題ID:06-01-04-01-06-05
  • 予算区分:カンキツ連年生産
  • 研究期間:2003∼2005年度
  • 研究担当者:室岡順一、島義史、迫田登稔、辻和良(和歌山県農試)、熊本昌平(和歌山県農試)