飼料イネの小型ロールベール収穫・調製体系

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要約

改良した小型カッティングロールベーラによる刈取・梱包、自走式ロールベール収集運搬車等による運搬作業を軸とした小区画水田向けの飼料イネの小型ロールベール収穫・調製体系である。作業負担が軽減でき、ラップサイレージの品質は概ね良好である。

  • キーワード:飼料イネ、小型ロールベール、カッティングロールべーラ、収集運搬車
  • 担当:近中四農研・作物開発部・機械作業研究室
  • 連絡先:電話084-923-4100、電子メールwenarc-seika@naro.affrc.go.jp
  • 区分:近畿中国四国農業・作業技術、共通基盤・総合研究、共通基盤・作業技術
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

中山間地域では、担い手の減少、高齢化の進行、耕作放棄地の増大など危機に直面しており、これらの解決策の一つとして飼料イネを基 軸とした耕畜連携の推進が期待される。排水不良田でも安定して収穫作業ができる専用機が開発、市販され、牧草用機械の活用と合わせて飼料イネの作付面積が 拡大しつつある。しかし、小区画水田への導入は収穫機の大きさの制約等から難しい場面が多く、必ずしも水田利用率の向上につながっていない。そこで、市販 の小型カッティングロールべーラを基軸とした小型ロールベール収穫・調製体系を確立し、小区画水田における飼料イネの収穫・調製作業の省力、軽労化を図 る。

成果の内容・特徴

  • 小区画水田向けの飼料イネの小型ロールベール収穫・調製体系である。本体系は、改良した小型カッティングロールベーラによる刈取・梱包、担架式運搬具または自走式ロールベール収集運搬車による小型ロールベールの拾い上げ・運搬、小型ベールラッパによる密封作業で構成する(図1)。
  • 小型カッティングロールべーラの結束方式は短時間で結束できるネット式で、トワイン式に比べ梱包時間がロールベール1個当たり約15s短縮し、収穫時間は平均約92min/10aである(図1、表1)。また、運転席に梱包圧力感知用ライトの装着、刈取部から梱包室への搬送部の改良により、作業性が改善している。
  • 小型ロールベール用の担架式運搬具は、数a区画向けの2人組作業用の安価で軽い道具で、素手に比べ運搬作業時の作業姿勢が改善し、圃場内の運搬時間は55∼100min/10aである(図1、表1)。
  • 自走式ロールベール収集運搬車は、最大積載量400kgで、クローラ式走行部を有する堆肥散布機兼用型である。放出された小型ロールベールの拾い上げ(図1)、小型カッティングロールべーラからの直接受取が可能で、運搬作業時の心拍数増加率は30%以下である(表1)。
  • 小型ロールベールは、質量が約40kg、寸法は直径50cm×幅73cmである。小型ベールラッパで密封したロールベールサイレージの発酵品質は概ね良好である。
  • 本体系の試算費用は、収穫・調製面積7.5haで収量が60ロール/10aの場合に27,660円/10a、461円/ロール、収量が80ロール/10aの場合に34,680円/10a、434円/ロール程度である(図2)。

成果の活用面・留意点

  • 畜産農家等の小区画水田における飼料イネの収穫・調製作業に利用できる。
  • 安定して刈取・梱包できる飼料イネは、倒伏していない草丈70∼130cm程度である。
  • 小型ロールベールの乾物密度は約90kg/m3と低いため、低水分での収穫、長期間保管する場合は、乳酸発酵を促進するため収穫時に乳酸菌等を添加する。
  • 改良した小型カッティングロールべーラ、担架式運搬具及び自走式ロールベール収集運搬車は平成18年度に市販予定である。

具体的データ

図1 飼料イネの小型ロールベール収穫・調製体系

 

表1 小型ロールベール体系の作業性

 

図2 小型ロールベール収穫・調製費用の試算結果

 

その他

  • 研究課題名:小区画水田に対応した飼料用稲の収穫・調製体系の確立
  • 課題ID:06-03-07-01-10-05
  • 予算区分:交付金プロ(中山間耕畜連携)
  • 研究期間:2003∼2006年度
  • 研究担当者:亀井雅浩、宗重 学((株)タカキタ)、山崎克己((株)タカキタ)、窪田 潤、奥野林太郎、藤原康弘((株)タカキタ)、奥村政信((株)タカキタ)、竹中尚徳(愛媛畜試)、石田茂樹