多収で、精麦品質に優れる裸麦新品種「トヨノカゼ」

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要約

裸麦新品種「トヨノカゼ」は多収である。粒はやや円粒で、整粒歩合が高い。軟質で搗精時間が短く、精麦品質が優れる。大分県で認定品種に採用された。

  • キーワード:ハダカムギ、多収、円粒、整粒歩合、精麦品質、精麦白度
  • 担当:近中四農研・作物開発部・裸麦育種研究室
  • 連絡先:電話0877-62-0800、電子メールwenarc-seika@naro.affrc.go.jp
  • 区分:近畿中国四国農業・作物生産(冬作)、作物・冬作物
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

1992年に育成された裸麦品種「イチバンボシ」は、安定多収のうえ精麦特性に優れることから、急速に作付面積を拡大し現在国内の裸麦の71%(2004年産)のシェアがある。しかし「イチバンボシ」に限定されるため、精麦品質に優れる新たな品種が求められている。そこで多収で、「イチバンボシ」より軟質で搗精に要する時間が短く、味噌加工に適する新たな品種を育成する。

成果の内容・特徴

「トヨノカゼ」は、1991年4月に四国農業試験場において、早生・良質・多収・大粒・大麦縞萎縮病抵抗性を育種目標に「四系9123」を母親、四国裸90号(後の「イチバンボシ」)を父親として人工交配(四交1301)を行い、F1を世代促進した。F2で個体選抜を行い、F3以降系統育種法によって選抜、固定を進めてきたものである。2004年度の世代は雑種第15代であ る。「イチバンボシ」と比較して、次のような特徴がある(表1)。

  • 六条渦性で播性の程度はVである。出穂期は1∼2日遅く、成熟期で同程度の早生である。
  • 稈長はやや長く、穂長はやや短い。穂数は広幅播ではやや少ないが、ドリル播では同程度になる。耐倒伏性は「やや強」である。
  • 大麦縞萎縮病抵抗性は「やや強」で、うどんこ病抵抗性は「中」である。
  • 赤かび病抵抗性は「やや弱」である。穂発芽性は「やや難」である。
  • 子実重は1割程度高く、整粒歩合はやや優る。リットル重、千粒重は同程度である。
  • 原麦粒の見かけの品質は同程度である。粒の色、粒の大小は同程度である。粒の形はやや丸い。
  • 60%搗精試験による精麦時間は短く、軟質である。精麦白度は同程度である。

成果の活用面・留意点

  • 東海以西の平坦地に適する。
  • 倒伏を招かぬように適期および適量播種に努める。
  • 赤かび病にやや弱いので適期防除を行う。
  • 大分県で認定品種に採用された。

具体的データ

表1 裸麦新品種「トヨノカゼ」の特性一覧表

 

その他

  • 研究課題名:裸麦の早生耐倒伏良質多収品種の育成
  • 課題ID:06-03-04-01-05-05
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:1990∼2005年度
  • 研究担当者:柳沢貴司、高山敏之、高橋飛鳥、土井芳憲、土門英司、藤田雅也、松中 仁、伊藤昌光、石川直幸、杉浦 誠
  • 発表論文等:命名登録(裸麦農林34号)及び品種登録出願