pF2.8以上に乾燥した土壌の乾燥程度を判定する安価な測器
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要約
pF2.8以上に乾燥した土壌の乾燥程度を判定できる。測器上部に溜まった空気層の厚さから土壌の乾燥程度を判定する。指示値は乾燥に強い作物の灌水指標となる。
- キーワード:土壌水分、灌水指標、pF
- 担当:近中四農研・地域基盤研究部・気象資源研究室
- 連絡先:電話084-923-4100、電子メールwenarc-seika@naro.affrc.go.jp
- 区分:近畿中国四国農業・生産環境・(土壌・土木・気象)、共通基盤・農業気象
- 分類:技術・参考
背景・ねらい
土壌の乾燥程度を知ることは、作物へ適切に灌水するために非常に重要である。しかし、土壌水分を計る測器として最も普及しているテ
ンシオメーターでは、pF2.8以上に乾燥した土壌では使用できない。さらに、比較的安価とされるテンシオメーターでも一般の農家が使うには高価である。
そこで、pF2.8以上に乾燥した土壌の乾燥程度を判定でき、かつ、安価な測器を開発する。
成果の内容・特徴
- 開発した測器はポーラスカップ、透明の塩ビ管、ゴム栓から構成される(図1)。構造が簡単で、約1000円と安価である。ポーラスカップ部分を土壌に埋設した後、塩ビ管に水を満たし、ゴム栓で栓をすることにより測定できる。
- 土壌のpF値が2.8以上になると、ポーラスカップを通して塩ビ管内部の水が出て行くとともに、塩ビ管内部に空気が入り、負圧によって空気が膨張する。塩ビ管上部の空気層の厚さ(指示値)を読むことにより、土壌の乾燥程度が判定できる(図1)。
- この測器には2通りの使用方法がある。すなわち、(1)毎日、指示値を読み取った後、水を補充する方法。この場合、指示値は土壌が乾燥するほど大きな値となる(図2)。(2)塩ビ管内部の水が無くなるまで水を補充しない方法。この場合、土壌の乾燥程度とpF2.8以上の期間に応じて指示値は大きくなる。図3の●は水を補充しない方法での指示値であり、□は毎日水を補充する方法での指示値を積算した値である。(2)の方法の指示値は、(1)の方法で測定した指示値を積算した値とほぼ一致する(図3)。
- 灌水や降雨によって土壌のpF値が2.8未満になると、負圧が無くなり、指示値はほぼ0に戻る(図3)。
- 大豆の莢伸長期における試験から、水を補充しない方法での指示値が100cm以下では青立ちの発生は少ないが、140cm以上では青立ちが多発する(図4)。
成果の活用面・留意点
- 土壌の乾燥程度が判定でき、作物の灌水指標として利用できる。
- 土壌のpF値が2.8未満では指示値は0である。そのため、灌水の目安がpF2.8未満の作物には使用できない。
- 図2に示す土壌水分と指示値の関係は、土壌の種類やポーラスカップの材質によって異なる。
- 塩ビ管に水を補充する場合、水をいっぱいまで入れてゴム栓をすることにより、塩ビ管内部に空気が残らないようにする。
具体的データ




その他
- 研究課題名:リモートセンシングによる乾湿害の発生状況と生育むらの調査技術の開発
- 課題ID:06-08-05-*-10-05
- 予算区分:委託プロ(ブラニチ2系)
- 研究期間:2003∼2005年度
- 研究担当者:黒瀬義孝
- 発表論文等:特願No.2006-10063