コマツナ無農薬ハウス栽培体系の導入による経営改善効果

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要約

コマツナ無農薬ハウス栽培体系の導入は、無農薬栽培コマツナの食害葉率を低下させ、収量を向上させる。その結果、所得は導入前の2.2倍の10a・1作当たり約29万円に、1時間当たり所得は約1,500円に増加し、コマツナ無農薬周年栽培経営を改善する。

  • キーワード:コマツナ、無農薬栽培、害虫総合防除、土壌環境改善、温熱環境改善
  • 担当:近中四農研・総合研究部・総合研究第4チーム、野菜部・野菜栽培研究室、施設栽培研究室、畑土壌管理研究室
  • 連絡先:電話0773-42-0109、電子メールwenarc-seika@naro.affrc.go.jp
  • 区分:近畿中国四国農業・農業経営、共通基盤・総合研究、共通基盤・経営
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

雨よけハウスを利用したコマツナ無農薬周年栽培経営では、多様な害虫の食害等による収量低下が大きな問題となっており、害虫総合防 除技術が求められている。また、土壌環境不良による生育不全や、夏期のハウス内での作業者の熱ストレスも問題であり、対策が必要になっている。そこで、こ れらを解決するための技術を組み合わせたコマツナ無農薬ハウス栽培体系をコマツナ無農薬周年栽培農家に導入し、その経営改善効果を実証農家における現地試 験結果と経営の変遷を踏まえて明らかにする。実証農家は、1994年に都市から新規就農し、1998年より雨よけハウス4棟各2.5aでコマツナ等の無農 薬野菜の生産を始めたが、本体系導入前の2001年度の収量は害虫食害等により低い状況にあった。

成果の内容・特徴

  • 本体系では、主な問題害虫であるキスジノミハムシ、ダイコンサルハムシ等の害虫に有効な害虫防除技術を組み合わせて総合的な防除を実施し、害虫食害による可販株率低下に対処する。また、土壌環境不良による生育不全には、明きょ設置等の土壌環境改善技術を実施する。さらに、簡易天窓の設置や作業者への送風を行う温熱環境改善技術の導入により、作業者の熱ストレスが緩和され、熱中症の危険がなく安全に作業できる時間が増加し、作業能率も向上する(図1)。
  • 害虫総合防除技術による食害葉率の減少、土壌環境改善技術による圃場排水性向上等により、10a当たり収量が本体系導入前の1.9倍の851kgに増加する(図2、表1)。
  • コマツナ無農薬栽培への本体系導入により、10a・1作当たりの販売量、販売額が大幅に増加して、所得が導入前の2.2倍の約29万円となり、草取り、虫取り作業等の労働時間が節減され、1時間当たり所得は約1,500円になると試算できる(表1)。
  • 本体系の導入により、実証農家の経営は以下のように変遷した。コマツナの収量増加に伴い、生産量が安定的に拡大することで、農業所得が導入前の2.3倍の307万円に増加し、農業所得のみで、導入前の農外所得を含む農家所得を上回る所得が確保された。労働時間は、導入前は家族労働2人で4,000時間を超え、過重な負担となっていたが、50%縮減され、家族労働1.2人程度の労働時間になった。また、2003年度(導入2年目)には、農業労働1時間あたり所得が倍増し、農外労働のそれを大幅(約2倍)に上回り、2004年度には専業農家としてコマツナ無農薬周年栽培を行うようになった(表2)。以上から、本体系の導入は、害虫の食害が重大な問題となっているコマツナ無農薬周年栽培経営を改善するものである。

成果の活用面・留意点

  • 雨よけハウスでアブラナ科野菜を無農薬栽培している事例に活用できる。
  • 本体系導入による収量増加を経営改善に結び付けるには、無農薬野菜を評価する安定した出荷先を確保することが重要である。実証農家は、一定価格での安定した出荷先を確保しており、2001年6月より有機JAS認証を受けている。

具体的データ

図1 小松菜無農薬ハウス栽培体系の概要

 

図2 無農薬周年コマツナ栽培での食害葉率と収量の年次変動

 

表1 コマツナ無農薬栽培への新栽培体系導入の効果

 

表2 新栽培体系の導入による実証農家の経営の返還

 

その他

  • 研究課題名:中山間水田における害虫総合防除等による高品位野菜生産システムの確立
  • 課題ID:06-01-09-01-13-05
  • 予算区分:中山間水田野
  • 研究期間:2001∼2005年度
  • 研究担当者:尾島一史、長坂幸吉、萩森 学、亀野 貞、安部順一朗、田中和夫、熊倉裕史、堀兼 明、池田順一、嶋津光鑑、浜本 浩