晩播による大豆「サチユタカ」子実の蛋白質含量及び脂質含量の変動
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要約
「サチユタカ」は晩播することにより子実の蛋白質含量が増加し、脂質含量が低下するが、それらの増減程度は他の品種に比べて大きい。両成分の変動には結実期間中の気温が関与しており、特に脂質含量への影響が大きい。
- キーワード:ダイズ、晩播、サチユタカ、蛋白質含量、脂質含量
- 担当:近中四農研・作物開発部・大豆育種研究室
- 連絡先:電話084-923-4100、電子メールwenarc-seika@naro.affrc.go.jp
- 区分:近畿中国四国農業・作物生産(夏作)、作物(作物・夏畑作物)
- 分類:技術・参考
背景・ねらい
水田輪作において、麦跡作の大豆栽培では播種期が遅れる場合が多い。「サチユタカ」は近畿中国四国地域において基幹品種として普及
しつつあり、水田輪作への導入も進展しているが、播種遅延による品質の変動に関しては知見が少ない。そこで、「サチユタカ」を晩播して主要な子実成分であ
る蛋白質含量及び脂質含量の変動状況を明らかにする。
成果の内容・特徴
- 「サチユタカ」は晩播することにより蛋白質含量が増加し、脂質含量が減少する。他の品種でも同様の傾向が認められるが、「サチユタカ」は晩播による両成分の増減程度が大きい(図1)。
- 2001年∼2005年の5か年では、台風による影響で百粒重が大幅に減少した2004年以外は、各年次とも「サチユタカ」を晩播することにより高蛋白、低脂質となり、栽培年次を通じて一定の変動傾向にある(表1)。5か年平均では約1ヶ月播種期を遅らせることにより、蛋白質含量は約2.5%増加し、脂質含量は約1.5%減少するが、播種期間の変動係数は脂肪含量の方が大きい。
- 蛋白質含量は脂質含量と強い負の相関があり、結実日数、結実期間中の平均気温及び積算気温とは負の、百粒重とは正の相関が認められる。逆に脂質含量は結実日数、結実期間中の平均気温及び積算気温と正の相関が認められ、各相関係数は蛋白質含量に比べてやや大きい(表2)。
- 気象、土壌等環境条件の異なる地域で栽培された「サチユタカ」でも、晩播により高蛋白、低脂質の傾向が認められ、増減程度は脂質含量の方が大きい。また、蛋白質含量及び脂質含量とも、播種期間で有意差が認められる(表3)。
成果の活用面・留意点
- 水田輪作において、麦跡作で晩播栽培される「サチユタカ」の豆腐加工適性の参考とする。
- 栽培地または気象条件によっては、晩播しても高蛋白、低脂質とならないことがあり、気象、土壌等の環境要因による子実成分の変動について調査する必要がある。
- 晩播による蛋白質含量及び脂質含量の変動が「サチユタカ」で他の品種よりも大きい傾向は、所内圃場の試験から得られた知見である。
具体的データ




その他
- 研究課題名:温暖地向け高品質・多収・機械化適性・豆腐用大豆系統の開発
- 課題ID:06-03-05-01-01-05
- 予算区分:交付金
- 研究期間:2001∼2005年度
- 研究担当者:岡部昭典、菊池彰夫、猿田正恭