作期、栽植密度、遮光処理がホウレンソウ抗酸化活性に及ぼす影響

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要約

ホウレンソウの抗酸化活性は作期や栽植密度により異なり、夏季に低く、密植によっても低下する。夏季の遮光も抗酸化活性を低下させるが、収穫数日前に二重遮光の片方を取り除き遮光率を減少させることで改善することが出来る。

  • キーワード:ホウレンソウ、抗酸化活性、作期、栽植密度、二重遮光、遮光除去
  • 担当:近中四農研・野菜部・畑土壌管理研究室、野菜栽培研究室
  • 連絡先:電話0773-42-0109、電子メールwenarc-seika@naro.affrc.go.jp
  • 区分:近中四農業・生産環境(土壌・土木・気象)
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

ホウレンソウに関する作物栄養条件と品質についてアスコルビン酸含量やβ-カロテン含量などに関する知見は多いが、野菜の健康維持 機能の一つとして重要な抗酸化活性に着目した研究は少ない。そこで、作期による変動、栽植密度や夏季の初期生育確保のために行われる遮光処理などの栽培環 境・栽培方法と抗酸化活性の関係を調査し、さらに抗酸化活性の低下を改善する栽培管理技術を検討する。

成果の内容・特徴

  • 雨よけビニルハウス栽培のホウレンソウは、作期により抗酸化活性が変動し、4月や8月の生産物は3月の生産物より低い(図1)。
  • 密植栽培では標準の密度の生産物と比べて抗酸化活性が低く、粗植で栽培すると抗酸化活性は高い(図2)。
  • 夏季雨よけビニルハウス栽培における遮光処理や紙マルチは、最大葉長を確保し可販株収量を向上させる(表1)。
  • 紙マルチ処理は抗酸化活性に影響しない。一方、ビニルハウスの外と内側の二重被覆下における高い遮光率(56%)での栽培は一重被覆下の低い遮光率(20%)で栽培した場合に比べて抗酸化活性を低下させる。片方を取り除いて収穫4日前に遮光率を減少させると、生育初期から低い遮光率(20%)で栽培した場合に近い抗酸化活性を示す(図3)。

成果の活用面・留意点

  • DPPHラジカル消去能法による抗酸化活性の測定には、これまでにホウレンソウにおいては抽出液として、5%メタリン酸溶液の方が80%エタノールより高い抗酸化活性が得られることを確認しているので、ここでは前者を用いて測定を行ったものである。
  • 近中四農研センター野菜部青野圃場(細粒褐色低地土)の雨よけビニルハウス栽培において得られた結果である。
  • 抗酸化活性が低くなりやすい夏季の遮光栽培において、抗酸化活性を維持する栽培技術として活用する。
  • 抗酸化活性を改善するために、遮光除去後に最低限必要な日数については、引き続き検討を要する。

具体的データ

図1 作期の異なるホウレンソウの抗酸化活性

 

図2 栽植密度がホウレンソウの抗酸化活性に及ぼす影響

 

表1 遮光処理と紙マルチがホウレンソウの生育と収量に及ぼす影響

 

図3 夏季の遮光がホウレンソウの抗酸化活性に及ぼす影響

 

その他

  • 研究課題名:ホウレンソウ等の抗酸化活性の変動要因の解明と制御技術の開発
  • 課題ID:06-06-03-*-17-04
  • 予算区分:委託プロ(ブラニチ6系)
  • 研究期間:2002∼2005年度
  • 研究担当者:福永亜矢子、吉田祐子、熊倉裕史、須賀有子、堀兼 明、池田順一