流通形態の違いによるホウレンソウ抗酸化活性の低下の実態事例
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要約
ホウレンソウの抗酸化活性は収穫物の周辺温度が高い場合に低下率が大きく、小売店もしくは消費者到着まで2日を要する流通形態においては、数時間以上持続する15℃以上の温度条件により3∼4割低下する事例がある。
- キーワード:ホウレンソウ、抗酸化活性、都市近接型、温度
- 担当:近中四農研・野菜部・畑土壌管理研究室
- 連絡先:電話0773-42-0109、電子メールwenarc-seika@naro.affrc.go.jp
- 区分:近中四農業・生産環境(土壌・土木・気象)
- 分類:技術・参考
背景・ねらい
ホウレンソウなどの葉菜類の品質、特に野菜の重要な健康維持機能の一つである抗酸化活性は、収穫後の流通・保存時に変動していると
考えられるが、収穫後の変動実態についての知見は少ない。そこで、中山間地域における主要な流通・販売形態である、都市近接型市場流通、直売所における販
売、また宅配便を利用した産地直接販売について、収穫後におけるホウレンソウの抗酸化活性変動の事例を調査し、その要因を主として温度条件との関連で解析
する。
成果の内容・特徴
- 都市近接型市場流通の調査において、5月収穫のホウレンソウは、小売店に届き販売される2日後には、抗酸化活性は収穫直後から3∼4割低下する。また、主要な抗酸化活性成分の一つとされているアスコルビン酸含量は、抗酸化活性と同様に低下する。一方、その後8℃の冷蔵保存条件では7日たってもほとんど低下しない。12月収穫では、抗酸化活性の低下傾向は見られるものの有意なものではなく、また収穫時の抗酸化活性が高いためその低下率は1割程度に留まる(図1-1)。
- 5月の調査において、収穫から調製まで、また流通時の一部で15∼20℃程度の温度環境となる。12月収穫の場合、温度環境は調製作業を行う数時間以外は15℃以下である(図1-2)。
- 宅配便を利用した産地直接販売においては、冷蔵輸送を行う6月では抗酸化活性は低下しないが(図略)、常温輸送を行う11月では、収穫翌々日の到着時の抗酸化活性は収穫直後と比べて3割程度低下する(図2-1)。11月常温輸送の場合、宅配集荷後の収穫物周辺温度は15℃以上となる(図2-2)。また、朝収穫により収穫当日に冷蔵もしくは常温日陰条件で販売される直売所においては抗酸化活性は低下しない(図略)。
成果の活用面・留意点
- 本データの抗酸化活性は調査現地で直ちに5%メタリン酸溶液に浸せき後、速やかに抽出し、DPPHラジカル消去能法にて測定した結果である。
- 都市近接型市場流通や宅配産直においては、流通に日数がかかることや収穫物周辺の温度環境上昇が抗酸化活性低下に関わっている可能性が認められるので、抗酸化活性維持のための改善点として、15℃以下の温度に保つことが有効と考えられる。
- 消費者が収穫当日に購入可能な直売所では、常温でも日陰条件で保存されれば、収穫直後の抗酸化活性が維持されていることがメリットになり得る。
具体的データ




その他
- 研究課題名:収穫後処理が葉菜類等の抗酸化活性変動に及ぼす要因の解明と品質保持技術の開発
- 課題ID:06-06-03-*-12-05
- 予算区分:委託プロ(食品)
- 研究期間:2004∼2005年度
- 研究担当者:福永亜矢子、小森冴香、尾島一史、須賀有子、堀兼 明、池田順一