ホウレンソウの雨よけ栽培対応型半自動多条移植機
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要約
ホウレンソウの雨よけ栽培に対応するため軽量化・小型化を図ったセル成型苗用の半自動多条移植機である。作業精度は手植えとほぼ同等で、作業能率は4∼7s・人/株で同等かやや上回り、作業姿勢が改善し、移植作業の軽作業化に有効である。
- キーワード:ホウレンソウ、半自動多条移植機、セル成型苗、野菜、作業姿勢、軽作業化
- 担当:近中四農研・作物開発部・機械作業研究室、野菜部・野菜栽培研究室
- 連絡先:電話084-923-4100、電子メールwenarc-seika@naro.affrc.go.jp
- 区分:近畿中国四国農業・作業技術、近畿中国四国農業・野菜、共通基盤・作業技術
- 分類:技術・参考
背景・ねらい
ホウレンソウの移植栽培は、高温期における発芽の斉一化と苗立ち率の確保、立枯病等の土壌病害の軽減、間引き作業の省力化、在圃期
間の短縮による年間作付け回数増加等の利点があげられる。しかし、慣行の直播栽培と比較して移植時の労働負担が圧倒的に増加するため生産現場にほとんど普
及していない。そこで、レタス用半自動多条移植機(香川県農業試験場開発)を基に、条間・株間の短縮並びに軽量化・小型化を図り、ホウレンソウの雨よけ栽
培に適した電動型のセル成型苗用の半自動多条移植機を開発する。
成果の内容・特徴
- 本機は、全質量52kg、全幅950mmとレタス用半自動多条移植機より約16%の軽量化・全幅で約39%の小型化を図ったホウレンソウセル成型苗4条植え用で、4個の移植ユニットを千鳥配列している(図1、表1)。
- 多条の移植ユニットを同時に上下させる動力はモータ駆動(DC12V-60W)で、両側のハンドル部に設置したスイッチ操作は作業者2人のうちどちら側からでも行うことができ、本機の移動及び苗供給は人力で行う(図1、表1)。電動型のため低騒音で排気ガスを排出せず、雨よけハウス内での作業が快適に行える。
- 株間設定は前後方向に15cm離して千鳥配列した移植ユニットを活用し、前列2ユニットで移植した苗を目安に後列2ユニットが直線上に並ぶ位置まで本機を15cm移動させて行う。雨よけハウス内での移植作業時の株間の平均値と変動係数は14.3∼14.7cmと10.1∼11.2%で、手植えの15.0∼16.1cmと8.1∼10.9%と大差はない。
- 雨よけハウス内の畝幅85cm、畝高12cm、条間15cm、株間15cm設定における4条植えホウレンソウセル成型苗の適正移植株率は95%以上と高い。
- 移植時の1株当たりの作業時間は4∼7s・人で、手植えの4∼12s・人と比較して作業能率は同等またはそれ以上で、作業者による個人差を低減できる(図2)。また、軽量・小型なのでハウス内の旋回は省スペースで可能である。
- OWAS法による作業姿勢判定で機械移植の99%が問題なく改善不要で、手植えに比べて作業姿勢が改善する(表2)。また、移植作業時の心拍数増加率は15%以下で、軽作業化に有効である(図2)。
成果の活用面・留意点
- 本機はホウレンソウの他、チンゲンサイ、シュンギク、コマツナ等の株間の狭い野菜にも対応可能である。
- セル成型苗の適正移植株率は、砕土が悪い場合に欠株や転び苗が発生して低くなることから、畝上の土壌表面の土塊径を10mm以下にする必要がある。
- 移植前のセルトレイ給水によって根鉢含水率を高めることで、移植作業時の手による苗の引き抜き成功率が高まる。
- 本機は平成16年に本体価格約56万円で市販された。市販機は、輪距が伸縮型(800∼1,800mm)となり、旋回無しで2∼8条並列植えに対応できる。
具体的データ




その他
- 研究課題名:セル成型苗を利用したホウレンソウの移植栽培体系の確立
- 課題ID:06-06-01-*-09-04
- 予算区分:交付金(所特定)
- 研究期間:2004年度
- 研究担当者:亀井雅浩、藤原隆広、内藤和男((株)和田オートマチックス)、熊倉裕史、高田健一郎(富山普及センター)、吉田祐子、窪田 潤