飼料用水稲品種「クサノホシ」の倒伏を抑制する稲体窒素吸収量の目安

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要約

飼料用水稲品種「クサノホシ」を乾田直播で栽培する場合、黄熟期または成熟期の稲体窒素吸収量を18∼19gN/m2とすることで、黄熟期の倒伏程度は収穫作業や品質に支障が出ない2に抑制され、全乾物重(稈基部からの測定値)1900g/m2程度が得られる。

  • キーワード:飼料イネ、クサノホシ、倒伏程度、稲体窒素吸収量、全乾物重、窒素施用量
  • 担当:近中四農研・作物開発部・栽培生理研究室
  • 連絡先:電話084-923-5351、電子メールwenarc-seika@naro.affrc.go.jp
  • 区分:近畿中国四国農業・作物生産(夏作)
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

飼料用水稲品種「クサノホシ」は高い乾物生産能力を持つが、多肥条件で倒伏しやすい。そこで、稲体窒素吸収量と倒伏程度および乾物生産性との関係を解析することにより、倒伏を抑制しかつ全乾物重を高める栽培基準を策定するための知見を得る。

成果の内容・特徴

  • 飼料用水稲品種「クサノホシ」を乾田直播(条播)栽培すると、黄熟期または成熟期の稲体窒素吸収量の増加にともなって黄熟期の倒伏程度は高まる(図1)。収穫作業やホールクロップサイレージとしての品質に支障が出ない倒伏程度を2とすると、稲体窒素吸収量は18∼19gN/m2以下にする必要がある。
  • 稲体窒素吸収量の増加にともなって黄熟期または成熟期の全乾物重(稈基部からの測定値)は増加する(図2)。倒伏を抑制するために黄熟期または成熟期の稲体窒素吸収量の目安を18∼19gN/m2とすると、全乾物重(稈基部からの測定値)は1900g/m2程度が期待できる。
  • 窒素施用量を10∼18gN/m2とした場合、稲体窒素吸収量は窒素施用量と正の相関関係を示す(図3)。したがって、近畿中国四国農業研究センター内の水田土壌(細粒灰色低地土、土壌中の全窒素濃度0.14%)と同程度の地力の水田で化成肥料を使って「クサノホシ」を乾田直播(条播)栽培する場合、総窒素施用量を12∼13gN/m2とすると稲体窒素吸収量は18∼19gN/m2となる。

成果の活用面・留意点

  • 飼料用水稲品種「クサノホシ」の栽培管理に活用する。なお、2003年と2004年は基肥にLP複合肥料444E-80、追肥に硫安を用いた。また、2005年は全量基肥(LP140とLPSS100)とした。いずれの年次においても堆肥は無施用とした。
  • 化成肥料由来の窒素施用量は、栽培地の気象条件や堆肥の投入量、地力を考慮して判断する。
  • 本データは、4月18日∼5月2日に播種し、苗立密度64∼120個体/m2で得られたものである。播種時期が遅い場合には倒伏程度が高まるので留意する。

具体的データ

図1 黄熟期または成熟期の稲体窒素吸収量と黄熟期の倒伏程度との関係(2003~2005年)

 

図2 黄熟期または成熟期の稲体窒素吸収量と全乾物重との関係(2003~2005年)

 

図3 窒素施用量と黄熟期または成熟期の稲体窒素吸収量との関係(2003~2005年)

その他

  • 研究課題名:温暖地西部における飼料用イネの多収栽培技術の開発
  • 課題ID:06-03-06-*-04-05
  • 予算区分:ブラニチ3系
  • 研究期間:2003∼2005年度
  • 研究担当者:大平陽一、竹田博之、佐々木良治