高設ベンチの強制気化冷却による促成イチゴ一次腋花房の出蕾の前進化

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要約

開発した装置は、イチゴ高設栽培ベンチに密着させた浸潤した布に送風し、強制的に気化させて冷却するものであり、培地温を日中平均で最大5℃程度低下させ、また促成栽培イチゴの一次腋(側)花房の出蕾と果実収穫を最大十数日早めることができる。

  • キーワード:イチゴ、一次腋花房、気化熱、高設栽培
  • 担当:近中四農研・野菜部・施設栽培研究室、野菜栽培研究室
  • 連絡先:電話0773-42-0109、電子メールwenarc-seika@naro.affrc.go.jp
  • 区分:近畿中国四国農業・野菜、野菜茶業・野菜栽培生理
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

収穫期の他産地との競合を防ぎ、また年内収穫を目標とする場合、短日夜冷などの花芽誘導処理を行った促成栽培用イチゴ苗を、晩夏に 定植する必要がある。しかしその時期はまだ残暑が厳しく、定植後の培地温が高く維持されると、花芽誘導処理が無効になったり生長が著しく遅れることがあ る。その問題を回避するために、培地冷却機能を備えたイチゴ高設栽培装置を開発し、有効性を検証する。

成果の内容・特徴

  • 本装置は、野菜・茶業試験場で開発された、蒸発潜熱による培地冷却法(平成12年度野菜・茶業)を改良したものである。栽培ベンチは、プラスチックシート(S社)とそれを支える高架台(塩ビ管と鋼管製)からなる(図1)。シートの外側にはさらしを密着させて、5cm間隔で微少の穴を開けた塩ビ管に固定する。塩ビ管を通して、水が断続的にさらしに供給され、さらしは常に湿っている状態となる。この栽培ベンチの下には、ファンに接続されているポリエチレンダクトが設置されており、ファンを作動させてさらしに送風する(風速約2m/s)。さらしへの水供給と、ファン作動は午前6時より午後6時まで行い、定植から約1ヶ月間処理を行う。培地へのかん水は、培地冷却用の水とは別系統になっている。
  • 本装置による培地冷却を行った場合は、冷却処理を行わなかった場合に比較して、日中平均で最大5℃程度、培地温を下げることができる(図2)。
  • 本装置による冷却は、一次腋花房の出蕾と果実収穫を最大で十数日早める(図3、図4)。この効果により、頂花房と一次腋花房の収穫の中休みを軽減できる。

成果の活用面・留意点

  • 晩夏期におけるイチゴの早期定植環境改善のための技術要素になるとともに、翌5∼6月の培地温低下にも有効である。
  • 頂花房においては、定植時にすでに分化を終えているために出蕾時期に及ぼす影響は小さい。

具体的データ

図1 培地冷却装置を備えたイチゴ高設栽培装置の概略

 

図2 温度の日変化

 

図3 株当たりの一次腋花房の出蕾率の日変化

 

図4  株当たりの一次腋花房の果実収穫
数の日変化

 

その他

  • 研究課題名:高温時の不良環境改善による中山間地域におけるイチゴの安定生産技術の開発
  • 課題ID:06-06-02-01-12-05
  • 予算区分:気候温暖化
  • 研究期間:2003∼2005年度
  • 研究担当者:池田 敬、山崎敬亮、熊倉裕史、浜本 浩、藤原隆広