放牧牛に付着するチカラシバ種子の実態
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要約
チカラシバの開花は10月初旬に始まり、4週間後には花穂に付く全ての種子が完熟する。放牧牛に付着するチカラシバの種子数は、開花から4週目に最大となり、種子の付着は胸部や腹部で最も多くみられる。
- キーワード:チカラシバ、雑草、イネ科雑草、放牧、ウシ
- 担当:近中四農研・畜産草地部・草地飼料作物研究室
- 連絡先:電話0854-82-1962、電子メールrunsama@affrc.go.jp
- 区分:近畿中国四国農業・畜産草地
- 分類:技術・参考
背景・ねらい
中国・四国地方では、耕作放棄棚田の保全と利用を目的とした肉用牛の放牧が、各地で盛んに取り組まれている。しかし、一部の棚田放
牧地では、経年的にチカラシバの急激な拡大が認められている。チカラシバは、ブラシ状の花穂が放牧牛に敬遠され、繁殖力も旺盛なことから、いったん侵入を
許すと、その防除は極めて困難になる。そこで、チカラシバの拡大を支える要因として、とくに牛体に付着する種子に着目し、その侵入を防ぐための方策を検討
する。
成果の内容・特徴
- 調査地は、シバ、ススキ、ネザサ、チカラシバが混在する面積4.28haの野草地で、チカラシバが優占する面積が約16%を占める。チカラシバが優占する場所では、高さ95cm前後の出穂茎がm²当たりに約70本出現し、出穂茎当たりの平均種子数は約193粒である。調査の対象は、体重は490kg前後の黒毛和種繁殖牛3頭である。
- チカラシバの開花は10月初旬に始まり、その2週間後から一部の種子は完熟する。花穂に付く全ての種子が完熟するのは、開花から4週間後である。それ以降は、種子の自然脱粒により、花穂に付く完熟種子の数は急激に低下し、12月上旬までには全ての種子が落下する(図1)。
- 放牧牛に付着する種子数は、花穂に占める完熟種子の割合に比例して増加し、開花後約4週目で最大となる(図2)。
- 牛体における種子の付着部位は、胸・腹部で最も多く、全付着種子数の67%を占める(表1)。
成果の活用面・留意点
- 小規模放牧など放牧地間の移動を伴う放牧において、チカラシバの蔓延防止に配慮した移牧計画の策定に活用できる。
- チカラシバが開花する10月以降に家畜を移動させる場合は、牛体(とくに胸・腹部)に付着種子がないことを確認し、移牧の途中でも路傍のチカラシバ種子が牛体に付着しないように留意する。
具体的データ



その他
- 研究課題名:シバ型草地等における群落組成の動態解明(草地動態)
- 課題ID:6-07-04-01-06-05
- 予算区分:交付金
- 研究期間:1998∼2002年度
- 研究担当者:井出保行、小山信明、高橋佳孝、小林英和、福田栄紀