ため池における養鶏場排水中窒素の除去効果

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要約

養鶏場からは、鶏ふんの飛散や鶏卵の洗浄水に起因する窒素濃度の高い排水が流出するが、それはため池を利用して浄化することができ、ばっ気処理によりさらに浄化能を上げることができる。

  • キーワード:養鶏、全窒素、窒素除去、ため池、ばっ気処理
  • 担当:近中四農研・地域基盤研究部・土壌水質研究室
  • 連絡先:電話084-923-4100、電子メールwenarc-seika@naro.affrc.go.jp
  • 区分:共通基盤・土壌肥料
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

養鶏場は、他の家畜飼養施設に比べて排せつ物の適正管理が容易であるため、水質汚濁源とは見られていなかった。しかし、鶏舎から飛 散したふんに含まれる窒素は土中へ蓄積したり、降雨時に表面流出し、水質汚濁の原因となる。また、鶏卵の洗浄水は高濃度の窒素を含む排水となって流出す る。それらの排水は、既存のため池を利用することにより、低コストでの浄化が期待できる。

成果の内容・特徴

  • 18万羽の採卵鶏を飼養する養鶏場の下流にある、直列に連なるため池(貯水量約200m3/個、水深1∼2m、総貯水量約1,200m3)では、1つ目の池の全窒素濃度は20mg/Lを超え、うちアンモニア態窒素が半分以上を占める。ため池を流下するにしたがって、窒素成分は硝酸態窒素の比率が増え、全窒素濃度は減少する(図2)。
  • 池へ流出する湧水は、全窒素濃度16mg/L、アンモニア態窒素濃度約7mg/Lと高濃度である(図3)。これは土壌中への窒素蓄積が起きていることを示している。
  • 降雨時には養鶏場敷地からの表面流去水がため池へ流入するため、ため池の流出水量も増加する。それにともなって流出負荷量も増加するが、10mm以下の降雨では流出負荷はそれほど増加しない。また、負荷量のピークは降雨より遅れて生じる(図3)。
  • 浄化槽処理後の鶏卵洗浄水(約4m3/d)を1つ目の池へ流入させると、1つ目のため池の全窒素濃度は34mg/L、アンモニア態窒素濃度は21mg/Lに上昇した。しかし、1つ目の池でマイクロバブル発生装置を用いたばっ気を行うと、1つ目のため池の全窒素濃度は34mg/Lから24mg/Lに減少した。5つ目のため池でも、流出水の窒素濃度の低下と流出負荷量の減少がみられた(図4)。

成果の活用面・留意点

  • 下流側の池の流出負荷量が上流側より多いのは、流下過程で流入する湧水が多いためである。
  • 調査を行った溜池は素掘りで、一部の岸がコンクリートで補強されている。水草はウキクサのみで、魚類は生息していない。ばっ気開始後に貝類の発生が確認された。
  • 鶏舎外へ飛散した鶏ふん中の窒素は、通常は地中に浸透して地下水や河川水を汚染するため処理が困難であるが、ため池へ湧水として湧出する地形ではその窒素も浄化処理を行うことが可能である。
  • ウィンドレス鶏舎を使用している養鶏場は、ふんの飛散による汚染が少ない。
  • 養鶏場は山間部や傾斜地にあるものが多く、既存のため池を利用できる所が多い。しかし、池の浄化能力には限界があるため、休耕田等の利用もあわせて検討するべきである。

具体的データ

図1 調査地区 図2 流下過程での窒素濃度の変動(8月) 図3 降雨とため池からの全窒素流出負荷量の変動 図4 ばっ気前後の流出水中の全窒素濃度・負荷量の変動(2004.4.7~12.17の平均値)

その他

  • 研究課題名:ため池による養鶏場排水の浄化過程の実態把握と利用技術開発
  • 課題ID:06-08-04-*-06-04
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2004年度
  • 研究担当者:志村もと子