堆肥とワラ類が土壌細菌フロラと微生物バイオマス、呼吸活性に及ぼす影響

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要約

土壌細菌フロラは家畜ふん堆肥の施用で構成が大きく変化する。また、化成肥料に家畜ふん堆肥およびイナワラを併用することで、土壌細菌フロラの多様性が高まるのみならず、微生物バイオマス炭素も増加する。

  • キーワード:土壌細菌フロラ、PCR-DGGE、多様性、家畜ふん堆肥、微生物バイオマス炭素
  • 担当:近中四農研・野菜部・畑土壌管理研究室
  • 連絡先:電話0773-42-0109、電子メールwenarc-seika@naro.affrc.go.jp
  • 区分:近中四農業・生産環境(土壌・土木・気象)、共通基盤・土壌肥料
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

土壌の性質として、化学性、物理性、生物性が挙げられるが、これまでに化学性、物理性については多くの知見が得られている。一方、 生物性に関する知見のうち、微生物性(バイオマス、活性、フロラ)の中では、微生物バイオマス炭素(以下、バイオマス)、活性に関する知見に比べ、フロラ に関する知見は少ない。そこで、微生物のフロラ構成の指標としての多様性に着目し、まず、細菌に関して直接抽出した土壌DNAのPCR-DGGE解析を用 いて、有機質資材の施用が土壌細菌フロラの多様性に及ぼす影響を明らかにする。併せて、バイオマス、呼吸活性についても検討する。

成果の内容・特徴

  • DGGEバンドの濃度および位置関係を数値化して、土壌間の細菌フロラ構成の類似度によるクラスター解析を行った結果によると、堆肥の施用は土壌細菌フロラ構成の変化に与える影響が大きい(図1)。
  • 土壌細菌フロラの多様性は、硝酸系化成肥料(以下、化成肥料)単用に比べ、化成肥料と堆肥およびイナワラの併用によって高くなる。また、土壌からのDNA抽出量は、化成肥料単用に比べ、ワラ類や堆肥の併用で増加し、その影響は堆肥の方がワラ類よりも大きい(図2)。
  • 土壌からのDNA抽出量とバイオマスは、堆肥の施用区、無施用区それぞれにおいて、相関の傾向が見られる(図3)。

  • 化成肥料単用に比べ、ノンストレス肥料単用では多様性、バイオマスは高くなるが、呼吸活性が下がる。化成肥料と堆肥を併用すると、多様性、呼吸活性は高くなるが、バイオマスの増加効果は小さい。化成肥料とワラ類を併用すると、バイオマスは増加するが、多様性の増加効果は小さく、呼吸活性は下がる。一方、化成肥料に堆肥およびワラ類を併用すると、イナワラを用いた場合では多様性、バイオマスが、ムギワラを用いた場合では呼吸活性、バイオマスが、さらに高くなる(図4)。

成果の活用面・留意点

  • 本試験の結果は、近中四農研センター野菜部青野圃場(細粒褐色低地土)で得られたものである。
  • 土壌からのDNA直接抽出はBead-Beating法を用い、得られたDNAについて、細菌の種レベルでの分類・同定に広く用いられている16SrDNAのPCR-DGGE解析を行った結果である。
  • 多様性指数は、DGGEによって得られた各バンドの濃度を細菌種毎のパラメータとみなして数量化し、バンド毎の量的割合の値を用いて、シャノン・ウィナーの式によって算出した結果であるが、あくまで解析を行った実験条件における相対的な数値である。
  • 有機物施用が、土壌の微生物性に及ぼす影響に関する基礎資料となる。

具体的データ

図1 DGGEパターンに基づく堆肥・ワラ併用試験土壌の細菌フロラのクラスター解析

 

図2 堆肥・ワラ併用試験土壌の細菌フロラの多様性指数とDNA抽出量

 

図1~図4の凡例

 

図3 堆肥・ワラ併用試験土壌のバイオマスとDNA抽出量

 

図4 堆肥・ワラ併用試験土壌の細菌フロラの多様性指数およびバイオマス、呼吸活性

 

その他

  • 研究課題名:DNA解析に基づく土壌細菌群集構造の評価法の開発と土壌微生物性に及ぼす有機質資材の影響の解明
  • 課題ID:06-06-03-*-11-05
  • 予算区分:委託プロ(ブラニチ6系)
  • 研究期間:2002∼2005年度
  • 研究担当者:須賀有子、堀兼 明、福永亜矢子、池田順一