給餌条件下でコナガの増殖抑制に必要なコナガサムライコマユバチの放飼比率

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要約

蜜源を設置したコマツナ栽培ハウスでは、株あたり0.05頭のコナガ幼虫に対して、少なくとも1:6.4の放飼比率でコナガサムライコマユバチの雌成虫を放飼すれば、増殖を抑制できる。

  • キーワード:アブラナ科葉菜類、コマツナ、コナガ、コナガサムライコマユバチ、放飼比率
  • 担当:近中四農研・総合研究部・総合研究第4チーム
  • 連絡先:電話0773-42-0109、電子メールwenarc-seika@naro.affrc.go.jp
  • 区分:近畿中国四国農業・生産環境(病害虫)
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

アブラナ科野菜類の重要害虫であるコナガは、薬剤抵抗性の獲得が早いため、農薬以外の防除手段の確立が期待されている。コナガサム ライコマユバチは、コナガ幼虫の内部寄生蜂であり、日本に広く分布する土着天敵である。本種の成虫は、無給餌では短命で産卵数が少ないため、生物的防除資 材として活用する際には給餌場所を用意する必要が指摘されている。そこで、蜜源を設置したコマツナ栽培ハウスにおいて、発生初期を想定した低密度のコナガ の増殖を抑制するために必要なコナガサムライコマユバチの放飼比率を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • コナガサムライコマユバチ雌成虫の給餌のための蜜源(50%ハチミツ水溶液を浸み込ませたスポンジ)を6箇所に設置した1.3aハウス内において、ハウス内のコマツナ上に存在するコナガの2齢幼虫96頭(0.05頭/株)に対し、コナガサムライコマユバチの既交尾雌成虫15頭(放飼比率1:6.4)を放飼することで、コナガは初期個体数以下に抑制される(図1)。無放飼の場合にはコナガは初期個体数を上回って増殖する(図1)。
  • コナガの2齢幼虫111頭(0.05頭/株)に対し、コナガサムライコマユバチの既交尾雌成虫10頭(放飼比率1:11)あるいは5頭(放飼比率1:22)を放飼した場合、コナガの個体数は僅かに初期個体数を上回るが、無放飼区に比べ、顕著に抑制される(図2、図3)。

  • コナガの初期世代から第1世代までの世代間増殖率は、無放飼区で3.7∼34.7倍であるのに対し、放飼区では0.3∼2.4倍であり、放飼区でコナガの増殖抑制効果が確認される(表1)。コナガの初期世代から第1世代にかけての世代間増殖率の差から、コナガサムライコマユバチの寄生率は90.2∼93.0%と推定される(表1)。
  • 試験終了時のハウス内のコマツナの被害株率は、無放飼区で82.7∼94.7%であるのに対し、放飼区で32.0∼47.3%であり、放飼区でコマツナの被害が軽減される(表1)。

成果の活用面・留意点

  • コナガサムライコマユバチは、平成18年2月現在、農薬取締法に基づいて農薬登録されていないため、試験研究以外での増殖放飼による利用はできない。
  • 試験では、中山間地におけるアブラナ科葉菜類の周年栽培を想定し、ハウス内の畝ごとに播種日をずらしてコマツナを栽培したため、先に播種した畝の収穫時にはコマツナの持ち出しとともにコナガおよびコナガサムライコマユバチの持ち出しがあったと考えられる。
  • 試験実施時期の気温が必要放飼比率に与える影響を検討する必要がある。

具体的データ

図1 コナガ2齢幼虫96頭に対してコナガサムライコマユバチ雌成虫15頭を放飼したときのコナガ個体数の推移(放飼比率=1:6.4)

 

図2 コナガ2齢幼虫111頭に対してコナガサムライコマユバチ雌成虫10頭を放飼したときのコナガ個体数の推移(放飼比率=1:11)

 

図3 コナガ2齢幼虫111頭に対してコナガサムライコマユバチ雌成虫5頭を放飼したときのコナガ個体数の推移(放飼比率=1::22)

 

表1 コナガの平均世代総個体数、増殖率、放飼区での推定寄生率

 

その他

  • 研究課題名:中山間生産圃場での天敵行動制御技術の開発
  • 課題ID:06-01-09-*-09-05
  • 予算区分:新事業創出研究開発事業(地域型)
  • 研究期間:平成2002∼2006年度
  • 研究担当者:安部順一朗、長坂幸吉、萩森学、尾島一史