コムギ子実由来タンパク質と植物色素成分のムギ類赤かび病菌への抗菌性
※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。
要約
コムギ子実に含まれるペプチドのピュロチオニンと植物に含まれる色素成分ナリンジェリン、サクラネチン、ミリセチンはムギ類赤かび病菌に対する抗菌活性が認められる。
- キーワード:ムギ類赤かび病、抗菌性、ピュロチオニン、植物色素
- 担当:近中四農研・地域基盤研究部・病害研究室・作物開発部・育種工学研究室、品質特性研究室
- 連絡先:電話084-923-5336、電子メールwenarc-seika@naro.affrc.go.jp
- 区分:近畿中国四国農業・生産環境(病害虫)、共通基盤・病害虫(病害)
- 分類:科学・参考
背景・ねらい
赤かび病菌はムギ類の子実に感染し、そこで人畜に有害なマイコトキシンを産生するため、大きな問題となっている。また、赤かび病に対しコムギは明確な真性抵抗性を持たず、本病の発病が環境条件によって発病が影響を受けやすいことから抵抗性品種の育成が困難な状況にある。そこで、コムギに含まれるタンパク質やアントシアニンなど植物に含まれる色素成分の赤かび病菌に対する抗菌性を調べ、赤かび病抵抗性に関与する要因の知見を得る。
成果の内容・特徴
- 抗菌性の検定法は24穴マイクロプレートを用いて行う。マングビーン培地で培養したムギ類赤かび病菌(Fusarium graminearum)H3株の培養液をろ過、遠心分離し、104個
/mlの分生子懸濁液を作成する。マイクロプレートの1セルにつきポテトデキストロース(PD)培地250μl、所定濃度に段階希釈した供試溶液
100μl、胞子懸濁液50μlを入れ、25℃で培養する。2∼3日培養後、赤かび病菌の生育を対照区と比較し、菌の生育が認められないもの(抗菌性あ
り)、コントロールに比べ生育遅延が認められるもの(抗菌性弱)、コントロールと生育に差が認められないもの(抗菌性なし)と判定した。使用するPD液体
培地は寒天培地に比べ、抗菌性の検定がより高感度で行える(図1)。
- コムギ子実に含まれるペプチドであるα-ピュロチオニンおよびβ-ピュロチオニンは25μg/ml以上の濃度で赤かび病菌に対し抗菌性が認められるが、子実中に存在し硬軟質性に関わるタンパク質ピュロインドリン-aとピュロインドリン-bおよびα-アミラーゼインヒビターは単独では抗菌性が認められない(図2、表1)。しかし、β-ピュロチオニンとピュロインドリン-bを混合したときに、抗菌性がやや高まる(図3)。
- 植物に含まれるアントシアニンやその前駆体等の色素成分16種について、赤かび病菌に対する抗菌性を調べたところ、250μg/mlの濃度でナリンジェリンとサクラネチンに抗菌性が認められ、ミリセチンにも弱い抗菌性が認められる(表1)。
成果の活用面・留意点
- 試験に供試したタンパク質のうちピュロインドリン-aは400μg/g、ピュロインドリン-bは100μg/g、ピュロチオニンは200∼300μg/gの割合でコムギ子実に含まれている。植物色素については、子実に含まれる量は不明である。
- サクラネチンはイネのファイトアレキシンであり、ナリンゲニンはサクラネチンの前駆体である。
- 赤かび病菌に抗菌性を示した物質のin vivo における抗菌活性の有無を明らかにする必要がある。
具体的データ




その他
- 研究課題名:赤かび病に対する生育阻害効果を持つタンパク質成分の同定-小麦由来のタンパク質の抗菌性検定法の開発と抗菌特性の評価
- 課題ID:06-08-01-*-13-05
- 予算区分:交付金・重点研究強化費(16年度)
- 研究期間:2004∼2005年度
- 研究担当者:井上博喜・野方洋一・池田達哉・宮川久義