黒毛和種牛の乳ムチンエキソン2における糖鎖結合能

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要約

黒毛和種牛の乳ムチンMUC1のエキソン2に存在するVNTR領域の特徴的な繰り返し構造が明らかになり、糖鎖の結合能はVNTR領域の全てのSer及びThrで高い。

  • キーワード:肉用牛、黒毛和種、ムチン、MUC1、VNTR、糖鎖結合能
  • 担当:近中四農研・畜産草地部・育種繁殖研究室
  • 連絡先:電話0854-82-1285、電子メールwenarc-seika@naro.affrc.go.jp
  • 区分:近畿中国四国農業・畜産草地、畜産草地
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

ほ乳期間中における仔牛の疾病による損耗はその後の発育に大きく影響を及ぼすことから、肉用牛においては大きな問題となる。乳中に 存在するムチン(乳ムチン)は感染抵抗性等の非特異的一次免疫を主たる機能とし、特定のセリン(Ser)及びスレオニン(Thr)に糖鎖が結合する高分子 量の糖タンパク質で乳脂肪球膜上に発現している。乳ムチン遺伝子(MUC1)はエキソン2に1ユニットが60塩基の繰り返し配列 (VNTR:Variable Number of Tandem Repeat)構造を持つが、この構造と機能性との関連性については明らかではない。そこで、黒毛和種牛のMUC1のエキソン2の遺伝子構造を解析し、糖 タンパク質の機能性発現に重要な糖鎖の結合能を解析する。

成果の内容・特徴

  • MUC1-エキソン2のPCR解析(畜産草地部黒毛和種牛群、n=75)から、VNTRの繰り返し数と組み合わせにより以下の5種類の型が確認される。AA型:1350bp(28.00)、AB型:1350bp+1050bp(46.67)、AC型:1350bp+800bp(2.67)、BB型:1050bp(18.67)、BC型:1050bp+800bp(4.00)(数値は凡そのPCR増幅産物長、括弧内は出現頻度%)。
  • AA型のVNTR領域は16回反復(VNTR16)、BB型は11回反復(VNTR11)である。VNTR16ではアミノ酸置換により7種類のユニットが認められる。VNTR16とVNTR11のユニットの並びを比較すると、VNTR11では3箇所でユニットの欠失が認められる(図1)。
  • エキソン2において糖鎖の修飾を受ける部位を結合能から推定(NetOGlyc 3.1 Server、Technical University of Denmark)すると、VNTRを含む領域で糖鎖結合能がいき値を越える高い値を示し、特にVNTR領域の全てのSer及びThrで糖鎖結合能が高い(図2)。

成果の活用面・留意点

  • 乳ムチンの機能的特性とMUC1-VNTR領域の変異との関連性を解析する上での基礎的知見として活用できる。
  • 糖鎖結合能については、AA型及びBB型の2タイプについての比較であり、機能性評価について検討するためには他の型についても同定と解析が必要である。
  • 黒毛和種牛のエキソン2以外での糖鎖結合能は明らかでないが、ホルスタイン種の解析ではエキソン2以外で糖鎖結合能がいき値を越えるSer及びThrはほとんど認められない。

具体的データ

図1 VNTR領域に認められるユニット内のアミノ酸配列及びVNTR16とVNTR11におけるユニットの配列順

 

図2 VNTR16及びVNTR11の糖鎖結合能

 

その他

  • 研究課題名:肉用牛におけるMUC1の多様性と生産性形質との関連性の解析
  • 課題ID:06-07-01-*-11-05
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2004∼2005年度
  • 研究担当者:山本直幸、大島一修、小島孝敏
  • 発表論文等:山本(2005)、DDBJ/EMBL/GenBank、Acc.No.AB244643、Acc.No.AB244644