黒毛和種骨格筋の再生過程における骨格筋形成関連遺伝子の発現変動
※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。
要約
黒毛和種生体の骨格筋再生過程において、ミオスタチン遺伝子の発現は有意に減少し、筋転写調節因子(Myf5,MyoD,Myogenin,MRF4)の遺伝子発現は有意に増加する。
背景・ねらい
我国の代表的な肉用牛である黒毛和種において、産肉性を向上させることは重要であり、さらに良質なタンパク質源として、牛肉の安定
供給が望まれている。近年、骨格筋量を調節している遺伝子が次第に明らかになり、その1つにミオスタチン(Myostatin)遺伝子の存在が確認されて
いる。同遺伝子は骨格筋量を抑制的に調節する因子として知られ、肉用牛への応用が期待されている。本研究では肉用牛におけるMyostatinの応用を検
討するため、生体での骨格筋形成の近似モデルとして黒毛和種の再生骨格筋組織において、当該因子および筋転写調節因子(Myf5,
MyoD, Myogenin, MRF4)の発現状況を明らかにする。
成果の内容・特徴
- 16ヵ月齢の黒毛和種去勢牛(n=4∼9)の生体を対象に、皮膚を切開後の半腱様筋に対してドライアイス凍傷を誘発させ、骨格筋損傷モデルを作製後、再生過程にある骨格筋組織を経時的にバイオプシーにより採取する。
- 再生骨格筋組織におけるMyostatin遺伝子の発現は、損傷前の0日目と比較して、損傷後3日目および5日目で強い発現抑制が認められ、それぞれ68および83%の有意(P<0.01)な減少が認められる(図1)。
- 同様に筋転写調節因子の発現は、Myf5およびMRF4について損傷後3日目および5日目で有意な発現増加が認められ、MyoDおよびMyogeninについては損傷後5日目で有意(P<0.01)な発現増加が認められる(図2)。
成果の活用面・留意点
- 骨格筋形成の近似モデルとしての骨格筋再生過程において、Myostatinの発現が80%以上抑制されたことから、同遺伝子による骨格筋成長の抑制的調節作用の解除を示唆し、また、当該因子による肉用牛の産肉技術を開発する際に、この値を一つの指標として活用することができる。
- ドライアイス凍傷による再生骨格筋組織および当該動物からのバイオプシーによる試料採取技術を併用することで、供試動物の無屠殺かつ単一個体からの経時的な再生組織の採取が可能となり、また、筋転写調節因子の発現状況から生理現象を反映した骨格筋形成の近似モデル動物として活用することができる。
具体的データ


その他
- 研究課題名:黒毛和種における骨格筋形成関連遺伝子の発現解析
- 課題ID:06-07-03-*-09-05
- 予算区分:科研費、交付金
- 研究期間:2004∼2005年度
- 研究担当者:柴田昌宏、相川勝弘、松本和典