2004年の台風23号による香川県内のため池決壊の実態
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要約
香川県において2004年に台風23号で決壊したため池の60%は、貯水量が1000m3未満のかなり小規模なため池である。決壊率は、最大1時間雨量が100mm/hを超えると急激に増大する。決壊したため池には老朽化が進んだ池や流域比が大きい池が多い。
背景・ねらい
香川県では2004年に立て続けに台風による豪雨に見舞われ、農地や農業用施設に多大な被害が生じた。香川県農政水産部土地改良課
が2004年のため池の被害状況を調べたところ、決壊が114カ所、法面崩壊等の本堤被害が215カ所、土砂流入等その他が505カ所で確認された。その
総数は834カ所で、香川県のため池数(14,619カ所)の5.7%にあたる。今後の豪雨災害対策に資するため、最も被害が大きかった台風23号による
ため池の決壊の実態を、ため池台帳データ、雨量データ等を用いて分析する。
成果の内容・特徴
- 香川県では台風23号に伴い2004年10月20日に県面積の44%の地域で最大1時間雨量が40mm/h以上の豪雨があり、特に東部の中山間地で100mm/h以上の非常に激しい豪雨があった(図1)。この台風23号により104カ所のため池が決壊した(図1)。
- 決壊したため池の60%は、貯水量が1000m3未満のかなり小規模なため池である。また、規模別の決壊率(=決壊ため池数/ため池数)は、貯水量が500∼1000m3のため池で最も大きい(図2)。
- ため池の位置が記載された1/10,000地形図に最大1時間雨量の等値線(図1)を描いて、各等値線間に位置するため池と決壊したため池の数を数え、降雨強度別に決壊率を求めた。降雨強度別の決壊率は、最大1時間雨量が100mm/hを超えると急激に増大し、約4.5%の値になる(図3)。
- 最大1時間雨量が100 mm/h以上のエリアに位置する貯水量5000m3未満のため池について、ため池台帳データから老朽化状態を示す法面安定度、漏水程度、樋管機能、洪水吐機能および流域比(=流域面積/満水面積;流域比が大きいほどため池の水位は上昇しやすい)に関するデータを抽出し、決壊しなかったため池と決壊したため池に区分してデータを比較した。図4から、決壊したため池には老朽化が進んだ池や流域比が大きい池が多いことがわかる。
成果の活用面・留意点
- この分析は台風23号のみに着目して行っているが、同年には台風15号や台風21号に伴い香川県の南西部で激しい豪雨があったので、南西部ではこの時に堤体が損傷を受け台風23号で決壊に至ったため池があると考えられる。
- 今後の豪雨災害対策に資する基礎データとして活用できる。
具体的データ




その他
- 研究課題名:近畿、中国、四国地方における2004豪雨災害被災実態の解明
- 課題ID:06-02-02-*-10-05
- 予算区分:高度化事業(ため池防災)
- 研究期間:2005∼2006年度
- 研究担当者:福本昌人、吉村亜希子