堆肥供給組織の運搬・散布サービス提供を規定する要因と稲作農家の評価

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要約

堆肥供給組織の運搬・散布サービス提供は、堆肥生産規模、畜種、近隣農家の耕地面積規模・牛豚飼養密度、都市化、作業人員確保、等の要因に規定される。稲作農家は、耕地面積が大きく、高齢なほど、運搬・散布サービスを評価する傾向にある。

  • キーワード:家畜ふん尿、堆肥供給組織、運搬・散布サービス、稲作農家、評価
  • 担当:近中四農研・総合研究部・経営管理研究室
  • 連絡先:電話084-923-4100、電子メールwenarc-seika@naro.affrc.go.jp
  • 区分:近畿中国四国農業・農業経営、共通基盤・経営
  • 分類:行政・参考

背景・ねらい

近年、中国四国地域では堆肥供給組織(以下、組織)が各地で設立されつつある。一方、稲作農家の多くは条件さえ揃えば堆肥を利用し たいと回答しており、その条件に運搬・散布サービス(以下、サービス)をあげる回答が最も多い(中国四国農政局、2003年調査)。効率性の面から、個人 や第三者団体に加え、組織によるサービス提供が求められており、行政もこれをサポートしつつある。しかし、サービスを提供する組織の特徴ならびに地域条件 や、どのような稲作農家がサービスを特に評価するのか、明らかではない。そこで、組織のサービス提供を規定する要因と、稲作農家のサービスの評価傾向を検 討する。

成果の内容・特徴

  • 表1の変数による推定の結果(表2)、組織のサービス提供を規定する要因と、事例調査の知見から推察される背景は、次の6点に整理できる。1)堆肥生産規模が大きいほど、多くの需要者を獲得するためにサービスを充実させる。2)畜種が乳用牛のみの方が、成分値が低いために「圃場単位の土づくり」のニーズが高く、サービスを充実させる。3)袋詰供給を行う組織は、多くの需要者を獲得すべく、並行してサービスを充実させる。4)地域の総農家の耕地面積が大きいほど、労力負担の点でニーズが高く、サービスを充実させる。5)総農家数に対して牛豚飼養頭数が多いほど、飼養農家との競争が増え、サービスを充実させる。6)都市的地域に立地する方が、堆肥が滞ることによる地域住民の苦情が発生しやすいために堆肥供給を促進する必要に迫られ、サービスを充実させる。以上に加えて、先進事例である組織T(堆肥生産規模:1.5千t/年、畜種:乳用牛、中間農業地域)の実態をふまえると、充実したサービスを提供する組織の特徴として、作業人員の十分な確保が抽出できる。組織Tでは、酪農家に加え、稲作農家の平日農外勤務の40∼50歳代を中心に60人もの作業人員を確保しており、堆肥センターから半径5km圏内で隣接する5営農集団の水田へ、8.0a/人・h(6年・計120日平均)の高い作業能率でサービスを提供している(基準散布量2.6m3/10a)。
  • 組織Tに属する5営農集団の稲作農家のうち、組織Tが供給する堆肥を利用する(サービスの提供を受ける)稲作農家を対象に、表3の変数による推定の結果(表4)、稲作農家のサービスの評価傾向は次の2点に整理できる。1)耕地面積が大きいほどサービスを評価する傾向にある。2)年齢が高いほどサービスを評価する傾向にある。
  • 水田地帯に立地する組織(設立予定を含む)のサービス新規提供の可能性を検討する場面では、近隣の稲作農家の耕地面積規模ならびに高齢化の程度、牛豚飼養密度、都市化の程度に注目することが重要である。また、組織のサービス提供の初期段階では、作業人員の十分かつ継続的な確保に対する支援が特に重要である。

成果の活用面・留意点

  • 行政の立場から、特定組織のサービス新規提供の可能性を検討する場面と、サービス提供の初期段階における支援場面において、参考の情報として活用できる。
  • 堆肥の庭先価格、サービス料金、コスト面については、別途検討が必要である。

具体的データ

表1 組織のサービス提供を規定する要因に関する候補説明変数

 

表2 組織のサービス提供を規定する要因に関する推定結果

 

表3 稲作農家のサービスの評価傾向に関する候補説明変数

 

表4 稲作農家のサービスの評価傾向に関する推定結果

 

その他

  • 研究課題名:堆肥利用組織における運営計画策定手法の開発
  • 課題ID:06-01-03-*-11-05
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2005∼2005年度
  • 研究担当者:井上憲一