地域農産物の購入に影響する要因とその潜在的な購入者

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要約

国内や地域での農産物自給を支持し、地産地消に地域の優れた農産物の供給を期待している人ほど地域農産物を購入する傾向にある。末子が小学生の女性が地域農産物の有力な潜在的購入者であり、この階層への集中的な働きかけや支援策投入が効果的である。

  • キーワード:地域農産物の購入、農業価値観、地産地消への期待、都市農村交流活動
  • 担当:近中四農研・総合研究部・農村システム研究室
  • 連絡先:電話084-923-4100、電子メールwenarc-seika@naro.affrc.go.jp
  • 区分:近畿中国四国農業・農業経営、共通基盤・経営
  • 分類:行政・参考

背景・ねらい

都市部では最近農業に関心をもつ人が増加している。地域農業を支えていくためには非農家(都市住民、消費者)の理解を得て、連携を 図ることが重要である。そこで、関西圏および首都圏の6府県でのWebアンケート調査(2004年、1077票回収)および大阪府大阪市の小学校区での訪 問配布調査(2005年、901票回収)を実施し、地域農産物の購入に影響する要因と、今後の購入促進が期待される潜在的な購入者層を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 地域農産物の購入状況:「地元の農産物(地場野菜)」を「よく買う」「たまに買う」「以前買っていたが今は買わない」「買ったことがない」と回答した人は、Web調査ではそれぞれ18、60、3、19(%)の割合で、大阪学区調査では8、52、4、33(%)と購入者の割合がやや小さい。同様に、「なにわの伝統野菜」(学区調査のみ)では2、33、6、54(%)の割合で、「地元の農産物」と比べると購入者の割合は半数以下となっている。
  • 地域農産物の購入(行動)を説明するための要因として、A消費者の農業価値観(農業一般に関する価値観)、B地産地消への期待(農業のなかでも特定の価値観)を取り上げ、行動の判断基準となる価値観が具体的な行動の生起を規定するという因果関係を設定する。要因ごとの調査項目に因子分析を適用したところ、A消費者の農業価値観では、A1国内自給支持とA2農業支援支持の2つの共通因子、B地産地消への期待では、B1食に関わる交流への期待、B2地域の優れた農産物への期待、B3地域農産物活用への期待の3つの共通因子が抽出されている(表1)。
  • 上記の要因ごとに、抽出した因子を用いて共分散構造モデルを設定し、地域農産物の購入への影響を検討すると(図1)、2つの調査を通じて農業価値観モデルではA1国内自給支持(因果係数の値は、学区調査で0.23、Web調査で0.30)が、地産地消期待モデルではB1食に関わる交流への期待(同、0.16、0.10)とB2地域の優れた農産物への期待(同、0.19、0.23)が、地域農産物の購入に共通して影響する因子である。
  • 地域農産物の購入に影響している因子の項目ごとに性別、ライフステージで比較すると(表2)、性別では総じて女性の方が得点が高い。ライフステージでみると、同居している末子が小学生、乳幼児、社会人および子どもが同居していないグループで総じて得点が高い。特に学校給食での地域食材利用への期待で末子が小学生の女性、および伝統野菜の復活への期待で子どもが同居していない人の得点が高く、地域農産物の購入促進にはこれらの階層への集中的な働きかけや支援策投入の効果が高いと考えられる。

成果の活用面・留意点

  • 地域農産物の購入に影響する要因が明らかになり、最終的には地域農業振興に関する行政施策等の内容や対象者を絞り込むときの判断材料として活用できる。
  • Web調査はインターネットを使用している人を対象にした中山間地域まで含む広域での調査であり、学区調査は都市的地域に限定した調査であることに留意する。

具体的データ

表1 地域農産物の購入を説明する要因ごとの因子構造

 

図1 地域農産物購入を規定する要因(共分散構造モデル)

 

表2 項目得点の性別、ライフステージ別平均値

 

その他

  • 研究課題名:都市と農山村との共生・対流による地域農産物の活用方策の解明
  • 課題ID:06-01-05-01-05-05
  • 予算区分:地産地消
  • 研究期間:2003∼2005年度
  • 研究担当者:網藤芳男、大浦裕二(中央農研)