イチゴ作新規参入者の経営ステージ移行の円滑化を図る経営管理のポイント
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要約
イチゴ作新規参入者の経営管理意識は、創業期から拡大期にかけて栽培・作業管理から販売・雇用・コスト管理へと広がる。拡大期へ円滑に移行するには、創業期から雇用管理の意識と技術を高め、管理作業を担える被雇用者を育成しておくことが重要である
背景・ねらい
新規参入者は就農直後から経営全般の管理を行う必要があるが、新規参入者の経営管理の実態は十分に分析されていないため、経営ステージで異なる経営管理の意識や重点となる項目に沿った効果的な学習やアドバイスの提供が行えないケースがある。そこで、香川県のイチゴ作新規参入者を対象として、経営管理に対する意識の自己評定(以下、経営管理意識)や経営管理の具体的な取り組み事例を分析し、経営ステージ移行の円滑化を図る経営管理のポイントを明らかにする。
成果の内容・特徴
- 対象とした新規参入者は、就農から栽培面積拡大の意向が生じる創業~拡大準備期(以下、創業期)、新たに農地を調達するなどして栽培面積を拡大する拡大期という経営ステージをたどる。各経営ステージに位置する新規参入者の経営概況を表1に示す。就農後5年以上経過しても栽培面積拡大の意向がないグループは経営志向が異なると考えられる。
- 経営管理意識の経営ステージ間の相違を図1に示す。創業期と拡大期を比較すると、栽培管理や作業管理のスコアは同程度であるが、販売管理・雇用管理・コスト管理は差がある。イチゴ作新規参入者は、創業期には栽培管理や作業管理といった生産に関連する領域の意識が強く、その後に販売管理・雇用管理・コスト管理へと経営管理意識を広げるとみられる。
- 経営管理意識の経年変化を図2に示す。販売管理においては、「安定・継続的な取引が可能な販売先を選定・確保する」や「安値時でも売上を確保できる販売先を持つ」といった販路開拓に関する意識が創業期から強まるとみられる。雇用管理においては、「パートの配置、役割分担を適切に行う」「簡単な作業から難しい作業へと段階を踏んでパートに仕事を教える」といった作業の割り振りや教育に関する項目が拡大期の比較的早い時期に強く意識されるが、創業期の間に意識が強まる傾向にはない。
- 創業期から拡大期へ移行した新規参入者の具体的な取り組みを表2に示す。創業期からイチゴ作新規参入者には販売先のニーズに合わせた栽培方法のカスタマイズや段階的な販路開拓などが求められる。経営管理を充実させ拡大期への移行を円滑に行うためには、被雇用者との役割分担を進める必要があり、創業期から雇用管理の意識と管理技術を高め管理作業を担える被雇用者を育成して拡大期への移行に備えることが重要である。A氏は、創業期から作業実績の記録にもとづく段階的な技術指導を行い、被雇用者の熟練化を図っている。
成果の活用面・留意点
- 後発の新規参入者が経営計画を策定する際、支援者・機関が新規参入に対するアドバイスなどの支援方策を検討する際に基礎資料として活用できる。
- 本情報は、ハウスリース方式で新規参入者を受け入れている地域において、就農後の早い時期から雇用労働力を導入してハウス高設栽培を行う新規参入者を対象にした分析結果である。
具体的データ




その他
- 研究課題名:地域の条件を活かした水田・畑輪作を主体とする農業経営の発展方式の解明
- 課題ID:211-a
- 予算区分:基盤
- 研究期間:2006~2010年度
- 研究担当者:島 義史