窒素に富む地下水の低速潅水利用による窒素負荷削減栽培技術
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要約
日射量に対応して低速で富栄養化地下水を潅漑利用することにより、窒素負荷と肥料コストを削減した環境保全型の作物栽培が可能である。
- キーワード:地下水、潅漑、窒素負荷、低速潅水、環境保全
- 担当:近中四農研・広域農業水系保全研究チーム
- 連絡先:電話0877-62-0800、電子メールwenarc-seika@affrc.go.jp
- 区分:近畿中国四国農業・生産環境(土壌)、共通基盤・土壌肥料
- 分類:技術・参考
背景・ねらい
農業サイドでは肥料コスト削減が、環境サイドでは窒素等栄養塩類負荷の削減が課題となっている。さらに、生活や産業に必要な水量が増加し続けている現状において、水の有効利用は切迫した課題である。ここでは、施設栽培農家において、窒素に富む地下水を低速で日射に対応させてマーガレットに潅水し、減肥することで排水中の窒素成分を低減し、環境への窒素負荷を削減する栽培方法を検証する。
成果の内容・特徴
- 潅漑水は浅井戸から取り出した地下水であり、その硝酸態窒素濃度は夏期に20mg/Lを超え、徐々に低下して冬~春にかけては5mg/L程度と低くなる。また、降水に対応して濃度が変動する。低速潅水では、通常潅水に比べて、排水量を1/3、排水窒素量を半分に抑えられる(図1、表1)。
- ソーラーパネルを利用した日射対応型低速潅水では、潅漑水中の窒素の約9割がマーガレットにより吸収・利用される。窒素吸収量は4.6kg/10aと算定される(表1)。
- マーガレット切り花品質については、隔離ベッド(低速潅水、通常潅水)では節水しやすいために畑通常潅水と比較して花首長を抑制することができる。また、低速潅水では根圏での潅水の滞留時間が長く、そのため窒素利用率が高くなり(表1)、通常潅水と比較して葉色が濃い(表2)。
- 本栽培のように、施肥量を通常の半分以下に削減した条件でも、富栄養化地下水を低速潅水することにより、良好な品質の切り花が得られることから、肥料コストを削減肥料相当分の5,000~10,000円/10a下げることができる。
成果の活用面・留意点
- 作物の生育段階に合わせて、送水バルブを調節する(図1)。
- 窒素要求量が夏期に高く冬期に低い作物に適しているが、窒素が足りない場合は追肥し、窒素をきる場合は通常の潅漑水を利用することにより、多くの作物に適用できる。
- 窒素要求量の高い作物では潅漑必要水量が多くなるため、排水良好な圃場あるいは培地に限られる。
- 窒素以外の成分については検討していない。
- 関連成果として、平成16年度成果情報「隔離培地耕における点滴潅水の低速化による環境負荷低減効果」がある。
具体的データ



その他
- 研究課題名:有機性資源の農地還元促進と窒素溶脱低減を中心にした農業生産活動規範の推進のための土壌管理技術の開発
- 課題ID:214-q
- 予算区分:交付金
- 研究期間:2005~2006年度
- 研究担当者:吉川省子、渡邊修一、吉川弘恭(近中四農研)、村口浩(香川県農試)、大西孝志(香川県農改普セ)