温暖地で栽培された大豆のイソフラボン含量及び組成の品種間差異
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要約
温暖地で栽培された大豆の子実中イソフラボン含量及び組成には大きな品種間差異がある。含量は「新丹波黒」で低く、「伊予大豆」、「タマホマレ」、「四国5号」で高い。組成は「アキシロメ」でゲニステイン骨格型比率が低く、「久万大豆」で高い。
背景・ねらい
大豆子実中のイソフラボンは3種類のアグリコン(ダイゼイン、ゲニステイン、グリシテイン)を基本骨格とする配糖体からなり、ゲニステイン型の効果が強い抗発がん作用やダイゼイン型の効果が強い肥満・生活習慣病抑制作用など多くの生体防御機能を有する。一方、イソフラボンの錠剤や強化飲料の過剰摂取による内分泌かく乱作用などの影響が示唆され、その安全性が懸念されている。イソフラボン含量及び組成には品種間差異や環境変異があることが知られ、実需者及び消費者に安心できる大豆を提供するためにはその評価が必要であるが、これまで温暖地で栽培された大豆品種・系統及び栽培条件の違いを明らかにしたものは少ない。そこで、国産大豆の高付加価値化に資するため、温暖地で栽培された大豆品種・系統のイソフラボン含量及び組成の変異を明らかにする。
成果の内容・特徴
- 温暖地で栽培された大豆品種・系統のイソフラボン含量は最大10倍程度の品種間差異がある(図1)。温暖地向け大豆品種・系統のうち、低含量のものは「新丹波黒」などであり、高含量のものは「伊予大豆」、「タマホマレ」、「四国5号」などである。
- 温暖地で栽培された大豆品種・系統のイソフラボン含量は、成熟期の早晩による影響が認められるものの、年次間あるいは播種期間で高い正の相関があり、大豆品種・系統に大きく依存する(図2、図3)。
- 温暖地で栽培された大豆品種・系統のイソフラボン組成はゲニステイン骨格型比率で30%を超える品種間差異がある(図4)。温暖地向け大豆品種・系統のうち、ゲニステイン骨格型比率が低いものは「アキシロメ」などであり、高いものは「久万大豆」などである。
成果の活用面・留意点
- 温暖地におけるイソフラボン含量及び組成に着目した大豆品種・系統あるいは交配母本の選定に利用できる。
- すべての供試材料は、近中四農研内圃場(香川県善通寺市)にて標準耕種方法に準じて栽培されたものである。
具体的データ




その他
- 研究課題名:省力・機械化適性、加工適性、病害虫抵抗性を有する食品用大豆品種の育成と品質安定化技術の開発
- 課題ID:211-b
- 予算区分:基盤
- 研究期間:2004~2006年度
- 研究担当者:菊池彰夫、阿部大吾、猿田正恭、岡部昭典、齋藤 武、関谷敬三