カンキツ栽培におけるマルチおよび点滴かん水施肥法導入の現状と課題

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要約

露地カンキツ栽培における点滴かん水施設の導入面積は500ha以上であり、多くはかん水のみが目的である。普及拡大には助成事業の貢献が大きい。点滴かん水施肥法では、施設のコスト低減、かん水管理、水源確保等に関する技術開発の要望が多い。

  • キーワード:点滴かん水施肥、カンキツ、普及面積、施設導入、アンケート調査
  • 担当:近中四農研・次世代カンキツ生産技術研究チーム
  • 連絡先:電話084-923-4100、電子メールwenarc-seika@affrc.go.jp
  • 区分:近畿中国四国農業・果樹、果樹・栽培
  • 分類:技術及び行政・参考

背景・ねらい

マルドリ方式は、天候に左右されにくい省力的な高品質果実生産技術としてその有効性が認められ普及が図られているが、カンキツ栽培における点滴かん水施肥施設の更なる利用拡大に当たっては、カンキツ産地におけるマルドリ方式施設の導入状況を調査するとともに、各産地における高品質果実生産のための方針やマルドリ方式導入に際しての問題点等を把握する必要がある。このため、カンキツ主産22府県を対象にアンケート調査を行い、技術開発の方向性、普及施策等を明らかにし、マルドリ方式の今後の普及を促すことをねらいとする。

成果の内容・特徴

  • カンキツ生産の主要22府県における露地カンキツ栽培での点滴かん水施設の導入は535haであり、そのうちウンシュウミカンは434haである。また、ウンシュウミカンにおけるシートマルチとの併用は261haであり、中晩柑はほぼ全てが点滴かん水施設のみである(図1)。
  • ウンシュウミカン生産における点滴かん水施設の主な導入県は、熊本県、三重県、愛媛県、和歌山県、香川県等であり、タイマー等による自動化割合は約9%、液肥施用は7%である(表1)。大産地でも、スプリンクラかん水の普及率の高い県(和歌山県、愛媛県)では点滴かん水の導入率は低い。
  • 点滴かん水施設導入県の多くが助成事業による施設の導入を行った県である(図2)。
  • 多くのカンキツ産地において、今後の高品質果実の安定生産のためには優良品種の選定、シートマルチが重要であると考えており、さらに点滴かん水施肥の併用も必要としている(データ省略)。
  • 現在求められている有効なかん水(施肥)技術としては、点滴かん水(施肥)(17県)、手かん水・葉面散布(8県)、スプリンクラかん水(6府県)等である(データ省略)。
  • 生産現場における点滴かん水(施肥)の導入に伴い、今後検討されるべき技術的課題として、施設の低コスト化、品種・土壌ごとのかん水管理法、かん水時期の判断基準と適正かん水量の指標、水源確保法、園地内のばらつきが軽減できるかん水法等などがあげられている(表2)。

成果の活用面・留意点

  • 点滴かん水施肥法の利用拡大に対し、技術的に解決すべき課題の抽出に役立てることができる。
  • 行政としてカンキツ産地における点滴かん水(施肥)施設の導入状況を把握出来るとともに、今後の普及施策の決定に活用できる。

具体的データ

図1 点滴かん水施設の普及面積

表1 露地ウンシュウミカンにおける主産県1の点滴かん水施設導入状況

図2 助成事業による点滴かん水(施肥)施設導入を行っている府県

表2 点滴かん水(施肥)法において現場で求められている技術と回答府県数

その他

  • 研究課題名:次世代型マルドリ方式を基軸とするかんきつ等の省力・高品質安定生産技術の確立
  • 課題ID:213-f
  • 予算区分:カンキツ連年生産
  • 研究期間:2003~2007年度
  • 研究担当者:草塲新之助、森永邦久、星典宏、島崎昌彦
  • 発表論文等:草塲ら(2007)近中四農研研究資料 4:1-20