オーダーメイド化を可能にする平張型ハウス施工法

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要約

区画の傾斜や形状にフレキシブルに対応することができる平張型ハウスは、足場用鋼管に対応した省力埋設が可能な基礎杭や接合金具を利用することで、強度を確保しながら簡便かつ省力的に施工できる。

  • キーワード:平張型ハウス、足場用鋼管、スパイラル基礎杭、片屋根型
  • 担当:近中四農研・中山間傾斜地域施設園芸研究チーム、環境保全型野菜研究チーム
  • 連絡先:電話0877-62-0800
  • 区分:近畿中国四国農業・農業環境工学
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

日本の施設園芸において、約7割は依然として耐風性や耐積雪性が劣るパイプハウスであり、老朽化も進みハウスのリニューアルは喫緊の課題となっている。
   平張型ハウスは、傾斜畑での実証において高軒高・四方換気により換気性が優れ、同程度の強度を有する鉄骨補強型パイプハウスの約8割のコストで施工できる ことを明らかにしている。そこで、オーダーメイド化を目指して平坦地も含めた中山間地の多様な形状のほ場に適合させた施工技術を開発し、施工簡便化とコス トに留意した高強度ハウスの普及・実用化を促進する。

成果の内容・特徴

  • 基礎には、重機等による掘削が不要なスパイラル基礎杭を使用しており、地盤強度が十分に大きい場合は、50cm埋設杭でも1 本当たり17kN(1,734kgf)の引き抜き耐力を有している。人力による打ち込み、ねじ込み施工が可能であり、基礎設置作業の大幅な省力化を図るこ とができる(図1)。
  • ハウスの主構造である支柱-垂木接合は、ボルトなどの突起がなくフィルム破れの心配がない足場用金具を使用する。支柱頭にエンド金具、垂木側に片ボルト止金具を取り付け、M12ボルトとゆるみ止め機能を有したダブルナットで接合する(図1)。
  • ハウス側面には、通常のフィルム留め材より曲げ強度の大きい箱形フィルム留め材を利用することにより、支柱間隔を最大3mまで広げることができる(図1)。
  • 支柱と垂木で構成される主フレームの補強は、両端から25mmの位置にM12ボルト用の穴をあけた等辺山形鋼(50×50mm、肉厚4mm)を、方づえ補強として片ボルト止金具を利用して固定する。
  • 施工所要日数はハウスの規模・形状により異なるが、間口5m、奥行き12m規模の施工事例において、本体骨組みまでに約7人日、フィルム展張なども入れて計10人日を要する。これは、従来工法に比べ7割未満の時間で済む(表1)。
  • コスト水準は約1aでの施工実績で1平方メートル当たり約4,000円(骨組み資材費)である(表2)。被覆材、施工人件費込みで約70万円/aである。

成果の活用面・留意点

  • 平張型ハウスは、鉄骨補強パイプハウスと同程度の強度(耐風速30m/s)のハウスを自家施工などにより低コストで導入したい農家向きである。
  • 足場用鋼管対応スパイラル基礎杭(6mm厚×50mm幅、500~700mm長)は、接地圧・水平耐力確保の観点から、円板が地面に必ず接地するようにする。また、地盤強度が不足または石れき(こぶし大以上)が多い場合は、鋼板ベース型基礎などを用いる。
  • 方づえの等辺山形鋼の代わりに、足場用金具(エンド金具)を両端につけた足場用鋼管を利用できるが、金具抜けが無いよう必ず2本のビスで固定する。これにより、10kN以上の引き抜き耐力を有する。
  • 平成20年3月に施工マニュアルとオーダーメイド設計用試算シートを公開予定。

具体的データ

図1 平張型ハウス(片屋根型)の構造の概略図

 

表1 施工時間(間口5m×奥行き12m)

 

表2 資材一覧とコスト(間口5.4m×奥行き21m)

 

その他

  • 研究課題名:
    中山間・傾斜地の立地条件を活用した施設園芸生産のための技術開発
    中山間・傾斜地における環境調和型野菜花き生産技術の開発
  • 課題ID:213-c、214-u
  • 予算区分:交付金(2007年度のみ重点研究)
  • 研究期間:2006~2010年度
  • 研究担当者:長崎裕司、田中宏明、畔柳武司、伊吹俊彦