シートマルチ栽培を行う傾斜地カンキツ園における小規模排水路設置技術
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要約
シートマルチ栽培を行う傾斜地カンキツ園において、降雨時の表面流去水を安全に排水するための、施工が容易で低コストな簡易排水路の設置技術体系である。状況に応じて使い分ける3つの形式の設置技術から成り、設計を支援するソフトウェアも含まれる。
- キーワード:カンキツ園、マルチシート、排水、表面流去水
- 担当:近中四農研・次世代カンキツ生産技術研究チーム
- 連絡先:電話084-923-4100
- 区分:近畿中国四国農業・果樹
- 分類:技術・普及
背景・ねらい
カンキツ栽培において、高品質果実生産のためにはマルドリ方式を含めたマルチ栽培が有効であり、普及が進んでいる。一方、傾斜地
園では、マルチ敷設後の表面流去水の増加に対する懸念が、普及の阻害要因となっている。しかし、排水路設置の従来技術であるコンクリートフリューム水路な
どは、コストが嵩むと共に専門的な技術が必要である。
そこで、生産者自身による施工が可能な簡易で低コストな排水路設置技術を開発すると共に、利用可能な既製品の検討を行い、平成17年度本誌掲載の技術も含めた簡易な水路の設置技術を体系的にとりまとめる。
成果の内容・特徴
- マルチシートが概ね等高線方向に設置されており、等高線方向に排水する必要がある場合は、図1に示すようなマルチシートを用いて設置する簡易水路を利用できる。マルチシートを溝状にするために持ち上げる方法は、図1のハウス用パイプを用いる方法や杉板を杭で固定する方法などを利用できる。
- 等高線方向、または比較的緩やかな傾斜方向に排水する必要がある場合は、図2に示すような、土壌硬化剤「マグホワイト」を用いた水路が利用できる。小型の管理機などを利用して施工できて、撤去の際は破砕するだけで圃場に残しても樹に影響はないという利点がある。
- 高い耐久性が必要な場合や、比較的急な傾斜方向に排水する必要がある場合は、図3に示すような、市販のプラスチックフリュームを用いた水路を利用できる。設置にはパワーショベルなどが必要となる場合が多いが、コンクリート製のフリュームを用いる場合に比べて、重量が極めて軽く、一本が長尺であるため、施工は容易である。
- これらの水路の設計には、図4に示すソフトウェアを利用することができる。園地の勾配や排水量などを入力することにより、水が溢れないために必要な水路の深さなどを計算することができる。
成果の活用面・留意点
- 本技術は、傾斜地カンキツ園においてシートマルチ栽培を行う場合に、生産者自身が簡易に排水路を設置するために利用できる。
- これらの水路の設置法は、別途マニュアルとしてまとめるので、それを参照して設置することができる。
- マルチシートを利用した排水路を設置するための、マルチを持ち上げる方法はここに示したものに限られず、適宜、状況に合わせた方法を利用できる。
- 資材の価格は購入の状況によって大きく異なるので、図内に示したコストはあくまで参考値として取り扱わなければならない。
具体的データ



その他
- 研究課題名:次世代型マルドリ方式を基軸とするかんきつ等の省力・高品質安定生産技術の確立
- 課題ID:213-f
- 予算区分:交付金プロ(カンキツ連年生産)
- 研究期間:2003~2007年度
- 研究担当者:島崎昌彦、森永邦久、草塲新之助、星 典宏、村松 昇、平岡潔志、川本治、福本昌人、吉村亜希子
- 発表論文等:1)島崎ら(2005)平成17年度近畿中国四国農業研究成果情報、p.127-128